学校に通う通り道、メイン寺であるマハボディテンプル
(大菩提寺)前の賑やかな路を通るのだが
決まって毎日カードゲームしているおっさん達がいる。
昼過ぎから日没まで、毎日欠かさず。

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ある日ふらりと話しかけなんとなしに顔見知りになる。
通り路なので毎日挨拶する。
なんとなく親近感がわいていく。

彼らはみんなかなりのお金持ち。
今度ヨーロッパ旅行してくるとかさらりと出てくるし
大体1時間に1,000ルピー以上動くような
ゲームをひたすら続けるなんてありえない。

不動産屋のオーナー、風格ある
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通りの土産物屋オーナーのラカンさん
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彼ら、さすがに何か違う雰囲気を持っている。
落ち着きはらっていて、リラックス。
あんま喋らないのだが沈黙も気にならない。

興味を持って色々質問してみる。

「なんで働かないんですか?」
「みんな下の人に働かせてる。僕らが働いちゃだめ。
仕事まわしてあげないと若い人元気にならない。」
「じゃあ下の人が働いてる間、何か新しい事始めないんですか?」
「うん、今はしない。急がない。やりすぎ、速過ぎるはダメ。」
※この会話、日本語。相当うまい。

ソーシャルワークとかは「興味ない」し
若いとき頑張って働いて稼いだのかと思うと「たまたま」、
「どれかと言えば」ヒンドゥ教徒だけど仏教も好きだし
肉もなんでも食うし
ブッダガヤは昔は静かで良かったけれど
「どこも同じ。全て変わっていく。」と無常の精神をチラリ。

目の前だけを見ているのかと思えば
「日本人は移民を受け入れて今やってる仕事を彼らにまわし
ほかの事、たとえばこれからだったら高齢者ケアの領域とか、
で仕事を創り出して働かないとダメ」

中でも良くしてもらったのはアジャイさん。
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20歳で初めて日本に飛び込み住み着き
5年後に旅行代理店や貿易をする会社をつくって
約30年日本で生活していたと言う。

アジャイさん家には何度かお邪魔させて頂く。
屋根の部分は沖縄の赤瓦をイメージして
わざわざ日本の技師を呼んで作ったという村1番の大豪邸。
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お金の動かし方とか(お金がお金を生む投資概念、
例えば空港建設予定地の権利に投資してうん千万稼いだとか)
優秀な子供たちの通う塾の話(学校の前と後両方行くそうな)
何故働かないインド人がいるのか(暖かいから路上で寝ても死なない、
野菜穀物フルーツ沢山なってるから食うに困らない)
とかとか、色々話す。

日本国の将来も考えさせられた。

資源が豊富で自給率が高く(→輸入ニーズ低)
輸出やその巨大なマーケットにより外貨を稼ぎ、
政府により産業が保護されている、
(外国人は土地買えない、会社作れない、等) 、
インド。

それに対してわが国。
次なる成長分野は何処で、
どうやってそこに投資し、
現場を誰がどのように支えるのか、
そのために必要なしくみは何か。
旅行していて海外の人と会うにつれ
日本人の優秀さ(特に文化的美しさや繊細さは最高)
を再認しているので尚更思う、
能力はある、必要なのは国民で共有されたビジョンだ、と。

カーストやドーリー(結婚時に花嫁の家から新郎の家に贈られるお金)
についての考察も興味深かった。
「今は時代がかなり変わってきている。
前政権は補助金を出したりポストを提供をしたりと
かなりハリジャン を優遇した政策をとった。
努力次第でどうにでも打開できる。
それを言い訳にしてはいけない。」
同じ問題についても人によって言う事がかなり違う。
いや捉え方が違う。現実をどう見るか、だなと思う。
数ある中でも僕らにはアジャイさんの意見が一番フェアに聞こえた。

また家で飲んでいると色々なゲストが飛び入り参加する。
左からラカンさん、料理を作ってくれたサデさん、
品があって優しいドクターのマノジさん、中井貴一。
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聞くとDrマノジの大学資金はアジャイさんが出してあげたらしい。
ソーシャルワークに興味が無いと言ったアジャイさんだが、
実は何人もの若者達の進学資金をサポートしてきている事が分かった。
支援した中にはマノジさんのように成功し活躍している人もいれば
(貧しい人も来れるように診療代は無料にしている)
バックレたり全く花開かない若者もいると言う。
「それはそれでいい。お金を出してもあとは自分次第。」
「期待はしない。期待するからおかしくなる。」

このスタンスには正直うなった。
たった机と椅子だけでも感謝やその結果を
つい期待してしまう自分がいる事に気づかされる。
でも彼は自然体に、楽しみながら、
求めることも周りにひけらかすことも無く、
人助け(といわれるようなこと)をしている。
気づけば彼の周りには彼を「アジャイ・ジー」
と慕う素敵な人達がいっぱい集まっている。
(ジーは敬称。サンスクリット語元で日本の爺もそこからとか。)
ソーシャルワークという言葉は使わないが
彼は彼のやり方で、若者達の未来のために、
自分の持つ何かを役立てている人だと思う。

家への招待もお酒も料理もまったく強いる雰囲気が無い。
「いつでもいい、何でもいい、好きなようにするのが一番。」
と言いながらいつも本当に優しく、自然に、
どこの誰だか分からない旅行者をもてなすアジャイ・ジー。
言葉遣いも態度も本当に謙虚で丁寧。
口癖は「人それぞれ。みんな、違う。人と比べない。」
50歳、既に目線は自分の事ではなく
次の世代を見ていることが言葉の端々から感じられる。
色々世話になったという意味を超えて、
人間としてとにかく大ファンになった。

貧しいインド人。
社会貢献に燃えるインド人。
成功し冷静に現状を見つめている賢いインド人。
それぞれから、それぞれの学びがあります。