ほんの小さなプロジェクトですら
あれこれあってヒーヒー言っていた僕ら。
でもブッダガヤには机どころか
0から学校を作っちゃう先輩達がたくさんいる。
彼らの苦労たるや・・・

ということで机椅子PJTと平行して出会った
ソーシャルワーカー達の様子を通じて
別の角度で現場の感覚を伝えられればと思います。

今回紹介するのは
イダンのスーパーバイザーのカイラシュ。
経営と執行の両輪で言えば
イダンが経営(資金調達と意思決定)で
カイラシュが執行(現場の管理)。
現場を見学させてもらうたびに、
お金を出すだけじゃ事はなんにも進まなくて
現場の彼らの努力があってこそなんだと感じる。
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初めてイダンに連れられ村の見学をした日に
インタビューを申しこみ、早速翌日お邪魔する。

朝家のまわりで家族とリラックスモード。
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カイラシュ・プラサード、50歳。
自身のNGO「Jeeran Deep」にてビハール州における
貧しい子供達の支援活動を実施している。
配下に2スーパーバイザー、24スタッフ、
立派な社会企業家だ。

1960年、貧しい家庭に生まれる。
彼を含む村民のほとんどは
4つのカーストのさらに下のアウトカースト
にあたる不可触民「ハリジャン」で、
当時教育を受けている子供たちは村に1人もいなかったそう。

その後ビハール州を襲った大飢饉の時に転機が訪れる。
大混乱を極めた食糧の配給現場において
列を指示したりと事態の収拾に大活躍だった
カイラシュ少年に眼を留めたあるフランス人との出会いだ。

1974年そのフランス人からの資金援助を元に
あるアシュラム(住み込み式の学校、かな)へ通いだす。
「私は村で初めての教育を受けた子供だったんです。」
誇らしげに語るカイラシュ。

ちなみに援助コスト、その当時のお金で60ルピー/月。
これで食事も寝どころも教育もまかなえたらしい。
今色々聞く限りこの数倍のコストがかかるけれど
僕らの感覚からしたら「月にたった数百円」が払えない現実、
「月にたった数百円」が生み出す未来、
なかなか考えさせられる。

アシュラムで10年間勉強をした後、
ブッダガヤの著名なNGO「ダマセンター」で働き始めるカイラシュ、
そこではその後15年間働いたと言う。

次の転機は1999年。彼は自身のNGOを立ち上げた。
理由は大きく2つ。
1つは「より現場近くで支援していきたい。」という思い。
巨大な組織で働く人の常なのであろうか、
アドバイス中心で実際に手を下せない現状に
フラストレーションがあったようだ。
もう1つはあるベルギー人からの
資金援助のオファーとイダンとの出会い。

こうして設立した組織も今年でもう12年目、
組織も大きくなり支援する子供達の数も拡大中だ。
また日本とはJICAや多くのNGOとのつながりもある。
アシュラムで出会い、かれこれ30年の付き合いになる
大橋正明氏という方を介して現地視察のアテンドをしたり
日本に講演に来るなどしているという。
大橋氏は数多くのNGO、NPOを通じ
インドのみならず世界中で国際協力を行ってきた方 、
カイラシュの事務所には氏の著作も置いてあった。
なかなか興味深いタイトル、中にはカイラシュも登場する。
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教育の無い村に生まれた少年が
様々な出会いと支援を元に成長し
今度は自身で以前の自分のような子供達を
支援する事業を行っている。
彼の村はその後多くの子供達が教育を受け
現在様々な職で活躍しているという
(2人の弟は政府勤務、銀行勤務)。
ラジェッシュじゃないが
彼自身がまさにHOPEなんだと実感する。
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彼が実際に行っているプロジェクトも紹介したい。

後で分かるのだが彼のやっている下記事業は
他のソーシャルワーカーとかなり共通点が多いので
これに孤児院事業を足せばビハール州における
1つのモデルと言ってもいいと思う。

①学校事業 ”informal education”

貧しくて教育を受けられない子供達への無料教育。
4つの学校を10の村の400人子供達向けに展開している。
生徒の90%はハリジャン。50%が女の子だというが
これはインドでは驚異的な数字だという
(教育機会においても女性の不遇は顕著だ)。
プロジェクト名「informal」に込めた思いは
「教育に慣れていない子供達は強制しても勉強しない。
だからカジュアルに学べる場を目指したい。」
10人の先生達が働く。
運営資金の多くは彼らへの給料、
1人2,500ルピー(5,000円)/月。

ハスキー声で子供達をガシガシ指導する先生、この人マジ最高!大ファンに。
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授業は簡単な物書きもあるが歌や遊戯が中心だったよう。
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ペンが支給され喜ぶ少年、と調子に乗って遊んで糞を踏みつけた勇輝
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②クリニック事業

貧しい村民に対しての無料医療サービス。
2クリニック運営しており1日50-60人の患者が来るという。
この事業、4つのプロジェクトの中で最もお金がかかるそうだ。
ドクターの給料は5,000ルピー(10,000円)/月前後。
そして何より薬代がかなり高いと言っていた。

時折り誰かが来ては薬を渡していた。
ホメオパシーだ、と言っていたが詳細は不明。
実際に見てみると机の上に薬を並べてあるだけのようだが
これだけでもどれだけ村民の助けになるだろうか。
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左からカイラシュ、ドクター、ナース、村長の女性。
みんな優しくていい顔してる。
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③女性支援事業 ”small skills income generationg for women”

村の女性達に対しての裁縫やクラフティング教室の無料提供。
美和も書いていた通り、女性の「手に職をつける」ことにより
就職や収入源の選択肢を拡大することを目的としている
(income generating 、なるほど)。
これは結婚の際に新婦家族が新郎家族に支払うドーリー軽減にも
つながるそうだが、このドーリー、何かと問題が大きそうだ。
子供が生まれて女の子だったら殺してしまうお父さんの話、
ドーリー準備のために悪行をする偉い人の話、色々聞く。
下手すれば「金はかかるし仕事はできんし」、
と疎まれてしまい兼ねない女性の境遇の話は
これ以外にも色々な場面で遭遇する厳しい現実だ。

ただそういった中この事業の結果生まれている、
もう立派な大人の彼女達のキラキラした様子は
今まで接していた学校の子供達の目の輝きとは
また違う種類のもので、とてもグっとくる。

また教室でスキルを身につけた女性達への
マイクロファイナンスみたいなこと
(ミシンを買う小額のお金を貸しその後の収入から返済してもらう)
もイダンはチャレンジしているようだ。
いかに継続して支援していくか、
いかに自立を促すか、とても大事な視点だと思う。

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④井戸建設事業 ”drinking water sanitaiton”

水に困る村での井戸の無料建設。
ブッダガヤ(や勿論ムンバイやカルカッタや他のリゾート地も)
などの街では政府からのsupplied waterがあるので
蛇口をひねれば水が出てくるという環境は提供されている。
一方村ではほぼそういったインフラは提供されていない。
ニーズとしては大体100家族500人の村で井戸10個必要とのこと。
井戸1つ作るのに約14,000ルピー(28,000円)、
これで10家族が生活できるとなると貴重な資産だ。
また水は飲むなどの生活水としてだけでなく
農業においては生命線となる。
水路などない所では運ぶの本当に大変そうだけれども
乾季には全く雨が降らないこの地では致命的に重要な資源だ。
※井戸のコストはラジェッシュ達に聞くと5,000ルピーでできるとか
他のNGOだと520ドルかかるとか色々だが。

ちょっと手伝わせてもらいました。結構疲れるし重いから大変!
ちなみに水はガブガブ飲んでますがお腹大丈夫だしまろやかで旨い。
「supplied waterは飲めないけど井戸の水は冷たいし美味しいんだ!」って。
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最後に、上記のような通年プロジェクトの他に
彼らが取り組んでいる様々な施策イベントごとも簡単に紹介したい。

・田んぼや畑を持つ農家との「crop share contract」。

年間10,000ルピー(20,000円)支払うことで(農薬等は別途)
収穫する農作物の50%を買い取るというもの。
学校給食などに利用するらしい。
年間の収入の半分がたったの2万円?
でも売り手もつかないような現状があるのかな?
てかそもそも安くしか売れないのかな?
など色々考えたが、立ち会うことになった契約現場で
2人の農家の人達は多少の条件調整のうえ
嬉しそうにサインしていたからよかった。

英語のドキュメントをヒンディー訳するカイラシュ。
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さすがに張り詰めた空気の中だったが左の彼の後ろにはじゃがいも、
右の彼の乳首はずっとはみ出っぱなしだった。
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・年に1回の無料食事配布会。

学校のある村で約500人の全村民に対して
栄養たっぷりのベジカレーとプーリをご馳走。
老いも若いも、男性も女性も、みんなが車座になり食事を食べる。
とても素敵な空間だった。

朝、カイラシュ家では家族総出での準備に大忙し。
パンをこねて油であげる、横ではドデカイ鍋にたっぷりのカレーが。
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村ではどこを見回しても笑顔、笑顔、笑顔。
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「おーいもうちょっと野菜を入れてくれぇ」
「こっちこっち!早く!」
くそ暑い炎天下に汗をかきながら重い鍋を持って食料を配る青年に
ご老人からは容赦ないリクエストが。
施すものと施されるもの、という上下関係はそこになく、
元々描いていたような堅苦しい「社会貢献」の雰囲気もない。
ただ自然に、人と人が助け合って、一緒に生きているような。

カイラシュからは、数字を含む現場の実情や彼らの努力とともに、
その自然体のスタイルを学んだ気がする。

ほんの小さなプロジェクトですら
あれこれあってヒーヒー言っていた僕ら。
でもブッダガヤには机どころか
学校を作っちゃう先輩達がたくさんいる。
彼らの苦労たるや・・・
ということで机椅子PJTと平行して出会った
ソーシャルワーカー達の様子を通じて
別の角度で現場の感覚を伝えられればと思います。
今回紹介するのは
イダンのスーパーバイザーのカイラシュ。
経営と執行の両輪で言えば
イダンが経営(資金調達と意思決定)で
カイラシュが執行(現場の管理)。
現場を見学させてもらうたびに、
お金を出すだけじゃ事はなんにも進まなくて
現場の彼らの努力があってこそなんだと感じる。
■カイラシュピン
初めてイダンに連れられ村の見学をした日、
「今度詳しく話を聞かせて下さい」とお願いすると
「じゃあ明日でもうちにおいで」と快諾してくれた
カイラシュ、早速翌日お邪魔し色々お伺いすることに。
■家の様子
カイラシュ・プラサード、50歳。
自身のNGO「Jeeran Deep」にてビハール州における
貧しい子供達の支援活動を実施している。
配下に2スーパーバイザー、24スタッフ、
立派な社会企業家だ。
1960年、貧しい家庭に生まれる。彼を含む村民のほとんどは
アウトカースト(4つのカーストのさらに下)にあたる
不可触民ハリジャンで当時教育を受けている子供たちは
村に1人もいなかったそう。
その後ビハール州を襲った大飢饉の時に転機が訪れる。
食糧の配給現場、それはそれは地獄のような状況だったそう、
において列を指示したりと自発的な行動で活躍する
カイラシュ少年に眼を留めたあるフランス人との出会いだ。
1974年そのフランス人からの資金援助を元に
あるアシュラム(住み込み式の学校、かな)へ通いだす。
「僕は村で初めての教育を受けた子供だったんだ。」
誇らしげに語るカイラシュ。
またこのアシュラムでまた新たな出会いがあり
後に彼の人生をさらに飛躍させることになる。
ちなみに援助コスト、その当時のお金で60ルピー/月。
これで食事も寝どころも教育もまかなえたらしい。
今色々聞いてもこの数倍のコストがかかるけれど
僕らの感覚からしたら「月にたった数百円」が払えない現実、
「月にたった数百円」が生み出す未来、
なかなか考えさせられる。
アシュラムで10年間勉強をした後、
ブッダガヤの著名なNGO「ダマセンター」で働き始めるカイラシュ、
そこではその後15年間働いたと言う。
次の転機は1999年。彼は自身のNGOを立ち上げた。
理由は大きく2つ。
1つは「より現場に近いところで支援していきたい。」という思い。
巨大な組織で働く人の常なのであろうか、
アドバイス中心で実際に手を下せない現状に
フラストレーションがあったようだ。
もう1つはあるベルギー人からの資金援助のオファーと
イダンとの出会い。
こうして設立した組織も今年でもう12年目、
組織も大きくなり支援する子供達の数も拡大中だ。
また日本とはJICAとのつながりもある。
アシュラムで出会い、かれこれ30年の付き合いになるという
大橋正明氏という方を介して現地視察のアテンドをしたり
日本に講演に来るなどしているという。
教育の無い村に生まれた少年が
様々な出会いと支援を元に成長し
今度は自身で以前の自分のような子供達を
支援する事業を行っている。
彼の村はその後多くの子供達が教育を受け
現在様々な職で活躍しているという
(2人の弟は政府勤務、銀行勤務)。
ラジェッシュじゃないが
彼自身がまさにHOPEなんだと実感する。
彼が実際に行っているプロジェクトも紹介したい。
後で分かるのだが彼のやっている下記事業は
他のソーシャルワーカーとかなり共通点が多いので
これに孤児院事業を足せばビハール州における
1つのモデルと言ってもいいと思う。
①学校事業 ”informal education”
貧しくて教育を受けられない子供達への無料教育。
4つの学校を10の村の400人子供達向けに展開している。
生徒の90%はハリジャン。50%が女の子だというが
これはインドでは驚異的な数字だという
(教育機会においても女性は不利なようだ)
プロジェクト名「informal」に込めた思いは
「教育に慣れていない子供達は強制しても勉強しない。
だからカジュアルに学べる場を目指したい。」
10人の先生達が働き、給料は2,500ルピー(5,000円)/月。
②クリニック事業
貧しい村民に対しての無料医療サービス。
2クリニック運営しており1日50-60人の患者が来るという。
この事業、4つのプロジェクトの中で最もお金がかかるそうだ。
ドクターのサラリーは4,000-7,000ルピー/月
そして何より薬代がかなり高いと言っていた。
③女性支援事業 ”small skills income generationg for women”
村の女性達に対しての裁縫やクラフティング教室の無料提供。
美和も書いていた通り、女性の「手に職をつける」ことにより
就職や収入源の選択肢を拡大する(income generating なるほど)。
これは結婚の際に新婦家族が新郎家族に支払うドーリー軽減にも
つながるそうだが、このドーリー、何かと問題が大きそうだ。
子供が生まれて女の子だったら殺してしまうお父さんの話、
ドーリー準備のために悪行をする偉い人の話、色々聞く。
学校では多くの子供達と接しその眼の輝きに感動してきたが
もう立派な大人の彼女達のキラキラした様子は
これまた違うものでグっとくる。
また教室でスキルを身につけた女性達への
マイクロファイナンスみたいなこと
(ミシンを買う小額のお金を貸し付け
その後の収入から返済してもらう)
もイダンはチャレンジしているようだ。
いかに継続して支援していくか、
いかに自立を促すか、とても大事な視点だと思う。
④井戸建設事業 ”drinking water sanitaiton”
井戸の無料建設。
ブッダガヤ(や勿論ムンバイやカルカッタや他のリゾート地も)
などの街では政府からのsupplied waterがあるので
蛇口をひねれば水が出てくるという環境は提供されている。
一方村ではほぼそういったインフラは提供されていない。
ニーズとしては大体100家族の村(@5人)で井戸10個必要とのこと。
井戸1つ作るのに約14,000ルピー(これはラジェッシュ達に聞くと
5,000ルピーでできるとか他のNGOだと50,000ルピーかかるとか色々だが)、
これで10家族が生活できるとなると貴重な資産だ。
上記のような通年プロジェクトの他にも
色々な施策イベントごともやっているようなので
最後に簡単に紹介したい。
田んぼや畑を持つ農家との「crop share contract」。
年間10,000ルピー支払うことで収穫する農作物の
50%を買い取るというもの(学校給食などに利用)。
農薬などの実費は別途。
年間の収入の半分がたったの2万円?
でも売り手もつかないような現状があるのかな、
そもそも安くしか売れないのかな、など色々思う。
■契約現場に何故か立ち会うことに。
年に1回の無料食事配布会。
学校のある村で約500人の全村民に対して
栄養たっぷりのベジカレーとプーリをご馳走。
施すものと施されるもの、
というより一緒に生活しているような
コミュニケーションの場のようだった。
■カイラシュ