(前回からの続きです)
決戦の興奮覚めやらぬまま帰宅し
鍵を無くしている事に気づいた僕は、
懸命に記憶を辿った。
最後に持ってたのは、たしか、、、
チケット渡すゲートでボディチェックの際に
時計と一緒に脇のテーブルに置いて、、、、
あそこだ。
その後きっと取り忘れたのだ。
誰もいない住宅街で待っていても危ないし
場所は明確なのでとりあえずスタジアムに向かおう。
スタジアムへ向かう途中
事務所みたいなところがあったので
数人にLOST AND FOUNDサービスについて聞いてみた。
「知らない。ゲートで無くしたならそこへ行ってみれば?」
との残念な回答。
元からゲートには行くつもりでした。
いやまさか。
天下のワールドカップで
忘れ物サービスが無いなんて。。。
■祭りの後のスタジアムへ到着
ゲストハウスじゃなくてホームステイだけど
まさかスペアキーが無いなんてことは無いよな、
てことは最悪のケースでも数百ランド(数千円)
くらいかな、、、
などと考えながらゲートに着く。
セキュリティのような担当者が2人いるだけで
ゲートは空だ。
まだ人がいて忘れ物をキープしているかも
という最初の希望は打ち砕かれた。
念のためゲートをくまなく見るが鍵なぞ
置いてあるはずもなく
「今着たばかり」のセキュリティ担当も
LOST & FOUND の存在は知らない。
「control room」へ相談しろと言う。
元々ある可能性は低いと感じていた。
この時はとにかく打てる手を打ちつくす
という事だけを考えて動いていた気がする。
control roomまでの道は遠かった。
スタジアム内は撤去のスタッフ達であふれているが
誰に聞いても答えが違うしらしき部屋も全く無い。
が、30分ほどもがいた末ついに自信満々の応えに出会う。
「ここからピッチに入って逆のコーナーのゲートを抜けた所だ」
おっ、ピッチに出れるの!?、ラッキ!
などという余裕は無くとにかくピッチに向かう。
念のため。
周りに観光客は勿論ゼロだし
みんな物珍しそうに見てくるし、
かなり緊張していました。
話せばみんな本当に親切なのですが
やはりまだ南ア3日目ですし。。。
■セキュリティもいないゲートを抜けるとそこはまさに決戦の地
■カメラマン達が座っている席には電源も配備されていた
■ゲーム終了後3時間で恐らく一次だがクリーニングも終了していた
そしてたどり着いたcontrol room。
らしきスタッフがいる、希望の火が再び灯る。
「ゲストハウスの鍵を無くしたのですが届けはありますか?」
ゲートの場所や状況を懸命に説明する。
担当者はとても真剣に聞いてくれて好感が持てたが
答えを持っている様子は全く無い。
忘れ物クレーム一覧の頼りない手書きノートが1つあるだけで
それを管理するようなLOST&FOUNDサービスの臭いも全くしてこない。
そこへ1人の白人女性が入ってきた。
ちょっと役職を持ってそうな、気が強そうな人だ。
担当者が彼女に事情を説明してくれた。
うなずくとすぐに「カム」と外へ僕らを案内する、
クイックな動作に可能性を感じた。
早歩きで歩く彼女に声をかける。
「こんな夜遅くにすみません、せっかく終わったのに。」
「大丈夫気にしないで、あるといいわね。」
早口でそっけない口調だが優しい応えにほっとする。
連れて行かれたのはスタジアム外のグラウンドだった。
こんなところがあったのか。
いくつかテーブルがあり座っている人がいる。
その前で誰かがマイクで叫んでいる。
そしてそのまわりに多くのスタッフが集まってきている。
「何をやっているのですか?」
「ペイメントよ。」
ニコリと笑いながら彼女は答えた。
なるほど、今日はプレトリア最後の試合、
今まで働いたスタッフへの給与支払いなのか。
口座保有率も低いのかもしれないが
なんとも混沌とした状況だ。
■月明かりの下真っ暗なグランドで垣間見た世界最高の祭典を支えるスタッフ達
の現状。
その中からスーパーバイザー(SV)を見つけ出し
忘れ物があったか聞いてみると言う。
システムが無い以上人を頼るしかないと言う事か、
とにかく希望はそこしかないと全てを彼女に託す。
数分ほどするとSVを見つけたらしく
話をしているがSVの表情は僕らの希望を打ち破るのに
あまりにあからさまだった。
もう諦めよう、ありがとう、
そう言おうとした僕だったが、
それより早く彼女は次の手を打ってくれていた。
SV

決戦の興奮覚めやらぬまま帰宅し
鍵を無くしている事に気づいた僕は、
懸命に記憶を辿った。
最後に持ってたのは、たしか、、、
チケットを見せるゲートでボディチェックの際に、、
時計と一緒に脇のテーブルに置いて、、、、

あそこだ。
その後きっと取り忘れたのだ。バカだ!

誰もいない住宅街で待っていても危ないし
場所は明確なのでとりあえずスタジアムに戻ろう。

スタジアムへ向かう途中
事務所みたいなところがあったので
数人にLOST&FOUNDサービスについて聞いてみた。
「知らない。ゲートで無くしたならそこへ行ってみれば?」
との残念な回答。

さすがに天下のワールドカップで
忘れ物預かりサービスが無い・・・なんてことは
まさか、ないとは思うが・・・。

祭りの後のスタジアムへ到着

祭りの後のスタジアム。シーン・・・

ゲートについた。

セキュリティのような担当者が2人いるだけでゲートは空、
まだ人がいて忘れ物をキープしているかも
という最初の希望は打ち砕かれた。

念のためゲートをくまなく見るが鍵なぞ
置いてあるはずもなく
「今来たばかり」のセキュリティ担当も
LOST & FOUND の存在は知らない。
「control room」へ相談しろと言う。

「絶対あるわけない」
という思いに必死でフタをしながら
とにかく打てる手を打ちつくす事に集中することにした。

スタジアム内は撤去のスタッフ達であふれていた。
contorol roomへの道を何人にも聞いたが
それぞれ答えが違うし、らしき部屋も全く無い。

振り回され30分ほどぐるぐる歩いた末ついに自信満々の答えに出会う。
「ここからピッチに入って逆のコーナーのゲートを抜けた所だ」

おっ、ピッチに出れるの!?、ラッキ!

などという余裕は無くとにかくピッチに向かう。

セキュリティもいないゲートを抜けるとそこはまさに決戦の地

セキュリティもいないゲートを抜けるとそこはまさに決戦の地

カメラマン達が座っている席には電源も配備されていた

カメラマン達が座っていた席。電源も配備されていた

ゲーム終了後3時間で恐らく一次だがクリーニングも終了していた

ゲーム終了後3時間で恐らく一次だがクリーニングも終了していた

そしてたどり着いたcontrol room。
らしきスタッフがいる、希望の火が小さく再び灯る。

「ゲストハウスの鍵を無くしたのですが届けはありますか?」
ゲートの場所や状況を懸命に説明する。
担当者はとても真剣に聞いてくれて好感が持てたが
答えを持っている様子は全く無い。
忘れ物クレーム一覧の頼りない手書きノートが1つあるだけで
それを管理するようなLOST&FOUNDサービスの臭いも全くしてこない。

小さな部屋。これが・・・

質素で小さな部屋。これが大会のコントロールルーム・・・。つうかペイントとれよと心から自分へつっこみ。

そこへ1人の白人女性が入ってきた。
ちょっと役職を持ってそうな、気が強そうな人だ。
名前をSANTA WEIDEMAN、南ア人のマネージャーだ。
担当者が彼女に事情を説明してくれた。
うなずくとすぐに「カム」と外へ僕らを案内する、
クイックな動作に可能性を感じた。

早歩きで歩くサンタに声をかける。
「こんな夜遅くにすみません、せっかく終わったのに。」
「大丈夫気にしないで、あるといいわね。」
早口でそっけない口調だがどこか優しさを感じる。

連れて行かれたのはスタジアム外のグラウンドだった。
こんなところがあったのか。
いくつかテーブルがあり白人が座っている。
その前で誰かがマイクで叫んでいる。
そしてそのまわりに多くの黒人スタッフが集まってきている。

「何をやっているのですか?」
「ペイメントよ。」

ニコリと笑いながらサンタは答えた。
なるほど、今日はプレトリア最後の試合、
今まで働いたスタッフへの給与支払いなのか。
口座保有率が低いのかもしれないが
こんな混沌とした状況で支払いとは大変だ。
歓声やどよめきが響いている。

月明かりの下真っ暗なグランドで垣間見た世界最高の祭典を支えるスタッフ達の現状。

月明かりの下真っ暗なグランドで垣間見た世界最高の祭典を支えるスタッフ達の現状。

その中から該当のゲートを担当している
スーパーバイザー(SV)を見つけ出し
鍵を見たか聞いてみると言う。
忘れ物管理のシステムが無い以上、人を頼るしかないと言う事か、
とにかく希望はそこしかないと全てを彼女に託す。

数分ほどしてSVが見つかったが
そのSVの表情は、僕らの希望を打ち破るのに
あまりに充分だった。

もう諦めよう、ありがとう、
そう言おうとした僕だったが、
それより早く彼女は次の手を打ってくれていた。

SVに頼んで配下のスタッフそれぞれに聞いてみている、と。
諦めず手をつくしてくれる事への感謝と
正直「そんなんじゃきっと見つからないな」という落胆とが
入り混じった複雑な心境で答えを待つ。

そして5分後。

奇跡はおき、

るはずもなく、「sorry」、とサンタ。
うんわかった、疲れてるだろうに本当にどうもありがとう。
念のため何かできる事はないか聞くと
清掃が翌日入るからその結果を待つしかない、明日私に連絡して、
と名前と番号を残してくれた。
絶望しながらも最後まで優しい彼女に救われた気持ちになった。

あ

グラウンドで会ったのは3度僕らをつまみ出したスタッフ。sorryを言い合い最後はやっぱり握手で終了。

あきらめて帰ろうと思ったが、
サンタに「最後にもう1つお願い」と
電話を貸してもらうように頼んだ。
宿主に電話をしたかったのだ。
状況を説明して門を開けてもらわなくては。
念のためスペアキーがあるかってことも。

あいにくサンタは電話を持っていなかったのだが
わざわざ持っている人を探してきてくれた。
連れてきたのはちょっと前から気になっていた
体も声もデカい1人の男性だった。

「オウ、どした。なに?ゲストハウスの鍵をなくした?
それは災難だな。おしオレが電話をしてやるぜ。
大丈夫、どこの宿だってスペアキーはあるさ。ここは南アフリカだぜ。」
やはり大きな声で軽快に話し出し電話をかけてくれた。

あ

デカい体にカウボーイハットと鼻下のヒゲ、スタンハンセンだ。とすると横にいるのはザ・グレート・カブキか。

電話を切った彼は顔をしかめてこう言った。

「こいつは宿主か?横柄なやつだな。
それにしても災難だぜ、スペアキー無いってよ。」

きた、最悪のシナリオ。
キーがない
→きっと鍵屋を呼んでこじあけてもらうことに
(借りている部屋は一軒家タイプで頑丈な鉄条門がついている)
→数千円じゃすまないかもしれない
→さらに明日の昼出発のケープタウン行きのバス代(2人で1万円近く)もパー
→つうかもう鍵屋来ないだろうし今夜はどこに寝ればいいんだ?
・・・
朝からカツサンドつくって売って逃げて売って、
試合観戦してPKまで一喜一憂して、
一度帰ってまた戻ってきてたらいまわしりにされ(自業自得なんだけど)、、、
絶望感とともに一気に疲労感が押し寄せる。
ポキリと軽く心が折れた音がした、気がする。

「こりゃーまずいな兄ちゃん、OK、オレに任せろ着いてこい。」

いや、もう打てる手は打ちましたが、、、
と思いつつも既に彼、モスタート氏はスタスタ歩いている。

行く途中にちょっとした世間話。
「お前は日本人だろ、今日の試合は残念だったな。
日本はいい国か?南アは好きか?
オレは自慢じゃないが南アを出たことないがこの国が大好きだ。」
堂々と愛国心を語られるとなんともいえぬ嬉しい気持ちになるのは
僕だけだろうか。

ついた先は残念ながらまたもやcontorol room。
先ほどと同じ問答を繰り返すが当然進展は無い。
SVも持って無いし届け出も出ていない、もう無理なんです、
こんな夜遅くにすみませんでした、もういいんです、
と言おうと思ったが彼はまだ諦めない。
「ちょっと待ってろ」と言い残しどこかへ歩いていった。

30分ほど待つが彼は帰ってこない。
まだ探しているのだろうか。
美和はドンマイドンマイーと顔では笑っているが
ぺタリとしゃがみこんで動けない様子。
完全に諦めた僕は「最後にできること」
としてもう1度座っていた席へ戻り見てみる事に。

誰もいないベンチ裏を駆けてMMブロックへつく。
席を見回す、這いつくばり下を見る、
席と席の間もくまなく見る、
が、やはり、無い。あるわけ、無い。

とぼとぼとcontrol roomへ向かって歩く。
入り口の所でモスタートが仁王立ちしている。
ああ、お待たせしてすみません、
最後に一応席を見てみてみようと思って、、、、

彼の手元で何かが光った

彼は、僕に聞いた

「これはお前のキーか?」

「YEEEEEES!!!!!」

人はいないのにやたらライトがまぶしい夜のスタジアムに
僕の叫び声が響いた。
何故あったのか分からない。
何処にあったのかも分からない。
でも間違いなくそれは僕らの探しているキーだった。

歓喜の僕を見て彼はにやりと笑い
後ろを向いて美和の待つcontorol roomへ歩き出した。
僕は気がついたら彼の大きな背中に飛びついていた。
Thank you!Thank you!

「OKおつかれさん。もうおしまいだ、帰っていいぜ。」
そして彼は最後にこう付け足した。
「キレイなカミさんを持つのはいいよな。
オレもそうだから分かるぜ。ガァーッハッハ!」
鍵を見せた瞬間、美和も彼にジャンプで抱きついたとのこと。
そしてモスタートは「彼もオレに抱きつくかな?」と笑いながら待ち構えていたのだ。

鍵は、最初に僕らが探したゲートのあたりの道に落ちていたらしい。
自ら見つけたのか誰かスタッフに探させたのか誰かが持っていたのか
そのへんがよく分からなかったが
モスタートがわざわざゲートまで探しに行ってくれたのは確かだった。
普通、この状況なら、この環境なら、「お気の毒」で終わりだよな。
大会後で疲れて帰りたいハズなのに。なんてデッカイ男なんだ!

実は後で聞くと、宿にスペアキーはあったらしい。
その勘違いのおかげでなんともドラマチックな
エンディングとなった決戦の日。

日本が負けて、祭りが終わって、
なんとも言えない虚無感を感じていたけれど、
最後にお腹いっぱいの感動を頂きました。

そして親切で素敵 な南ア人のおかげで
この国が大好きになった!
ありがとう!!

あ

帰ってスーパーで買った300円ワインと200円チーズで売り上げ集計と祝杯を

それと鍵を無くした償いにカツサンドの余り材料でお好み焼きをつくりました。

+鍵を無くし3時間も歩き回らせた償いに、カツサンドの余り材料で妻へお好み焼きを作りました。