初めてこの街を知ったのはたしか中学生の頃。
遠藤周作「深い河」、強烈な印象だった。
以来、何度と無くこの街は
雑誌、書籍、映画、友人との会話、
形を問わず僕の前に現れた。
インドの宗教と歴史と混沌を
代表するような街、バラナシ。

今、僕らはその地にいる。

ガンジス川(ガンガー)沿いの旧市街。
迷路のような狭い路地を抜け川に出ると
階段状のガート群が目の前に現れる。
名前の通り歴史を感じる石造りの街並みは
これ以上なく美しく味がある。
初日、歩き始めて10分で、
この街の持つ雰囲気に魅了された。

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ガートの中でも恐らくもっとも有名なのは
火葬を行うマニカルニカガートだろう。

ガートに降りるといくつか炎が見える。
周りには薪を割る人、担ぐ人、くべる人、見守る親族。
炎の間を歩き回る犬、山羊、牛。
形は日本とは随分違うが、それはまさに、火葬だった。
とても自然で、荘厳で、美しい光景。
違和感も驚きもまったく無い。

ふと横を見る。
西洋人のカップルがロンプラ片手にいちゃついている。
炎の向こう側、川を見る。
観光客を乗せたボートが4-5台停泊している。
「はい今新しいのが燃え始めました。」
とでも説明しているのだろうか。

これにはひどく幻滅した。
なんというか、一気に白けた。
僕はすぐにでもその場から
立ち去りたい衝動にかられた。

ただ、人のことは言えない。
自分はと言えば、どこぞで書いてあったような、
「炎に包まれた人の足」や
「ぶくぶくと音をたてて燃える内臓」
を目撃する事をどこか期待していたのだった。

観光には「見せ物にする」一面があると思う。
それは分かっているつもりだ。
ただそういった理解とは関係なく、
とにかく僕は違和感を感じた。
節操が無い。
自分自身や親族の火葬風景を想像する。
横でガイドブック片手の外国人が見ている。
そんなの絶対に嫌だ。と。

*
*
火葬場を見てから、1週間がたった。
以来ここで足を止めることは1度も無いが
通り道なので毎日横を通る。
僕の勝手な違和感や幻滅をよそに
毎日同じ光景が繰り返されている。
他のガートや街を歩いていても
今までと比べて人に話しかけたり
カメラを取り出す回数が少ない。
1週間もたつと大体その街の空気に慣れてくるものだが、
僕はどうもまだこの街に慣れていないようだ。
不思議な感覚だ。

この街に対して抱いていた特別な感情、
これぞ歴史これぞ文化と唸る素晴らしい街並みへの感動、
行き過ぎた観光化に対する違和感と
「ガイドブック片手の外国人」の1人という自己認識、
恐らく今までで一番悪質な一部のインド人への嫌悪、
それら全てが入り混じって、
まだ消化し切れていないのだろうと思う。

明日はもうバラナシを発つ。
きっと最後まで消化なんてできないし
それでいいと思う。

とにかく、VARANASIを感じています。

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初めてこの街を知ったのはたしか中学生の頃。
遠藤周作「深い河」、強烈な印象だった。
以来、何度と無くこの街は
雑誌、書籍、映画、友人との会話、
形を問わず僕の前に現れた。
インドの宗教と歴史と混沌を
代表するような街、バラナシ。
今、僕らはその地にいる。
ガンジス川(ガンガー)沿いの旧市街。
迷路のような狭い路地を抜け川に出ると
階段状のガート群が目の前に現れる。
名前の通り歴史を感じる石造りの街並みは
これ以上なく美しく味がある。
初日、歩き始めて10分で、
この街の持つ雰囲気に魅了された。
■■
ガートの中でも恐らくもっとも有名なのは
火葬を行うマニカルニカガートだろう。
ガートに降りるといくつか炎が見える。
周りには薪を割る人、担ぐ人、くべる人、見守る親族。
炎の間を歩き回る犬、山羊、牛。
形は日本とは随分違うが、それはまさに、火葬だった。
とても自然で、荘厳で、美しい光景。
違和感も驚きもまったく無い。
ふと横を見る。
西洋人のカップルがロンプラ片手にいちゃついている。
炎の向こう側、川を見る。
観光客を乗せたボートが4-5台停泊している。
「はい今新しいのが燃え始めました。」
とでも説明しているのだろうか。
これにはひどく幻滅した。
なんというか、一気に白けた。
僕はすぐにでもその場から
立ち去りたい衝動にかられた。
ただ、人のことは言えない。
自分はと言えば、どこぞで書いてあったような、
「炎に包まれた人の足」や
「ぶくぶくと音をたてて燃える内臓」
を目撃する事をどこか期待していたのだった。
観光には「見せ物にする」一面があると思う。
それは分かっているつもりだ。
ただそういった理解とは関係なく、
とにかく僕は違和感を感じた。
節操が無い。
自分自身や親族の火葬風景を想像する。
横でガイドブック片手の外国人が見ている。
そんなの絶対に嫌だ。と。
*
*
火葬場を見てから、1週間がたった。
以来ここで足を止めることは1度も無いが
通り道なので毎日横を通る。
僕の勝手な違和感や幻滅をよそに
毎日同じ光景が繰り返されている。
他のガートや街を歩いていても
今までと比べて人に話しかけたり
カメラを取り出す回数が少ない。
1週間もたつと大体その街の空気に慣れてくるものだが、
僕はどうもまだこの街に慣れていないようだ。
不思議な感覚だ。
この街に対して抱いていた特別な感情、
これぞ歴史これぞ文化と唸る素晴らしい街並みへの感動、
行き過ぎた観光化に対する違和感と
「ガイドブック片手の外国人」の1人という自己認識、
恐らく今までで一番悪質な一部のインド人への嫌悪、
それら全てが入り混じって、
まだ消化し切れていないのだろうと思う。
明日はもうバラナシを発つ。
きっと最後まで消化なんてできないし
それでいいと思う。
とにかく、VARANASIを感じています。