残念ながら負けてしまったので、
ここでちょっと小咄を。
ある年のap bankのコンサートでのこと。
MCのミスチル桜井さんは
「僕の尊敬する大先輩です!」
と元気よく恒例のシークレットゲストを紹介したそうです。
このbank fesのシークレットゲストは毎回かなり豪華で
布袋や氷室に井上陽水から永ちゃんなどが出演する。
固唾を飲みゲストの出番を待ち受ける観客。
そして桜井さんの口から出たのは、、、、
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「KANさんでぇーす!」
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歓声どころかどよめきも起きない会場。
もちろんブーイングも無いままその一瞬は過ぎた。
人はある程度以上のショックを受けると
リアクションすらできないのだろう。
一拍の後、曲が始まった。
落胆した観客もその一拍で気を取り直し
みんな、あの曲を待っていた。
が。
KAN氏が歌いだしたのは
「愛は勝つ」ではない別の曲だった。。。。
1度ならず2度にわたって観客にスルーをくらわせたKAN。
僕の心に深く残ったこの小咄は
本記事とは全く関係がありません。
ちなみに美和はKANのファン。カップリング曲のタイトルとかたまらないらしい。
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僕らは日本戦に、あるチェレンジをしました。
カツサンドを販売することにしたのです。
勝負と言えば、かつサンド。最後に愛は、カツサンド。
最初は美和の軽い思い付きでしたが、
途中から本気になってしまった僕ら。
旅行予算的にこのままではちょっと厳しいことが判明し、
「だったら稼げばいいんだ!」と意識を転換。
現在無職の二人として今後生きていくお金を生み出してゆく
第一歩のトライアルとして決行することにしました。
前日は買出し。こっちの肉は肉!って感じがして本当によい。
関係ないけどさすが南アフリカ。ワインが何処でも大量に売ってて1本300円くらいからある。
その他前日作業:こつこつと、ポップやラッピング、コスチュームの作成も。
決戦当日。
朝11時から準備を開始した。
試合開始まで5時間、1時間半前に販売開始とすると
3時間半で30-40個作成がミッションだ。
①水分をはじくようにパンにマーガリンを塗っておく、
②肉から骨と皮を取り適当な大きさに切り塩コショウにつけておく、
(残念ながら日本の製品のように肉の事前処理はナシ、
これは前日のうちにやっておいたが一番大変だったと美和は言っていた)、
③キャベツを切り、マヨネーズで味付けする、
(マヨネーズの味がイマイチだったので魔法の粉・味の素を投入)
④ソースを調合する(愛しのブルドッグソースは勿論売ってない)、
⑤肉に小麦粉、卵、パン粉をつけて揚げる(パン粉はアブダビから持ち込み)、
⑥揚がった肉を切りソースをつけキャベツとともにパンにはさむ
⑦サンドをホイルに包みナプキンとともに紙袋に入れる
工程はこれだけ。
だが日本と勝手も味も違う食材で慣れないキッチンで初めての分量、
想像以上に大変で時間がかかった。
美和お疲れ&カツサンドづくりのプロの皆さんには感服いたします。
揚げまくったカツ。
はさみまくったサンド
14時30分。
ラストスパートでなんとか袋詰めにした大量の荷物を抱え
5分で終えたペイントフェイスで宿を出る。
twitterを通じて0円で確保したチケットを受け取りいざ出陣。
(チケットにお世話になった方々とwebのパワーに感謝です。)
が本当の戦いはここからだった。
スタジアム周辺での販売はできるのか。
まわりに聞く限りは「NG」情報が優勢だったが
前日スタジアムの周りにいた警官に
正直に聞いたところ全然OKという反応だった。
最初に早速つまづいた。
当初ゲート内オフィシャルショップ周辺での販売
を狙っていたのだが荷物チェックで引っかかり
ゲートを通過できない。
(食べ物の持込は禁止、かつ販売はもっての他。
大量の食料を持った日本人は大勢のスタッフに囲まれた)
しょうがなくゲートの外でダフ屋と肩を並べて販売開始。
出足をくじかれた僕らは最初こそペースをつかめなかったが
次第に調子にのって「いらっしゃいませ~!」と声を出し始めた。
なんか大丈夫そうだ。ゲートの係員たちも笑って見ている。
するとフジテレビや海外の局からテレビ取材され、
珍しがった多くの観光客が僕らを囲んだ。
「Japanese fotune victory sandwich」がウケたようだ。
しめた!これがチャンス!
僕らにカメラを向ける客へのカラみを中心に更に声を張り上げる。
こういうのは賑やか感が大事だ。
この時点でまだ1個も売れてないのでそれはそれは必死。「ハイ写真を取ったあなた1つお買いあげ!」
ここで流れが変わった、気がする。
最初の注文が入り、1つまた1つと注文が続いた。
最初に買ってくれたカップル、試合後に泣かれてるのをTVでお見かけしました
ノリノリの心優しきサポーターのお兄さん達、4つ買ってくれました。
最初に荷物チェックのゴタゴタ で時間がかかり焦っていたが、
まだ30分ある、あと20個くらいいけそうな予感がした。
が、そうは問屋が卸さない。
それは丁度2度目のフジテレビからの取材の途中だった。
「じゃあ、僕が話してそこからパーンしますんで、
元気よく声を出し続けてください」をもらった瞬間、
「何をしてるんだ?やはり売ってるじゃないか?」
僕らをゲートではねた運営スタッフのボスが隣に立っている。
やばい。目が怒ってる。
ハイすみませんでは駄目と思いとっさに僕が応えたのは、、、
「I don`t think so」
なんだI don`t think soって!?
自分でも不可解なこの曖昧な答えが相手に通じるわけも無く
抱えていたカツサンド一式を取り上げられそうに。
なんとかわめいてカツサンドを取り返した僕らだったが
あえなく退散を余儀なくされた。
しかたなくゲートからかなり離れて大通りまで出て、
ポリスのボスみたいな男に確認する。
「ここで売っていい?」「中に入らなければ問題ないさ」
なんだここならいいのか、と再び販売を開始したが、
調子が出だしたころに、またあの男がやってきた。
「いやいや!!あそこのポリスがOKって言ったんだ」
「どこのポリスだ?」
「あそこだ」と指差した先に先ほどのポリスはいない。
すると他の数人のポリスがやってきてスタッフの男が確認すると
あえなく「ここで売ってはだめだ」との回答。
箱ごとカツサンドを取り上げられる。
ゲーム・オーバー。
僕らの甲子園が、終わった。
詰問され必死に抗議(美和が隠し撮り)。でもさすがに3度目は相当怒ってた。
涙を飲んでカツサンドをふて食い。決戦のコスチュームはなんちゃってブルーTシャツと
美和手作りの新聞製の兜とヒゲを生かしたペインティング。
売り上げは集計していなかったがこの時点で
損益分岐点を越えていたことは明白だった。
よくやったよ俺ら、頑張ったよ儲けたよ、
と気持ちを入れ替えて試合を見に行ったのでした。
戦いの後はすがすがしい気持ちで応援ができました。
そしてスタジアムではネパールでご一緒したカモ夫婦と再々会。
世界丸一周してタイまできてあと帰るだけだったのにわざわざ来た大バカものです。
でもカツサンド買ってくれた!ありがとう!!
試合内容や試合結果については
僕がここで書くことではないので置いておいて
スタジアムの生のムードは素晴らしかったし、たくさんの南アフリカ人がペイントや
仮装をして日本を応援してくれたのは本当に誇らしかった。
入場のとき僕らをつまみ出した係員の女性たち。帰りには笑顔で握手。
「残念だったねー」となぐさめてくれた。ありがとう。どうもすみませんでした。
最後に、「愛はかつサンド」の販売結果をご報告いたします。
作成個数:36個
販売個数:29個(6個は取り上げられ1つはふて食いした)
原価 :359ランド(約4300円);肉を中心としたスーパー、文房具屋での調達品
売り上げ :1,210ランド(約14,500円);途中タフネゴシエーターに値引き販売をいくつか
利益 :851ランド(約10,200円 )
ん~あそこでつかまらなければ!
ひよって値引きしなければ!
などと思うところはありますがそういったリスクや変数も全てふまえるのが金儲け、
時給換算したら最悪ですがまあ初回としては良かったかなと納得しております。
そんなこんなで、スーパーでワインを買い
お疲れ様会でもしようと帰宅した僕らでしたが、
もう1つ、大きな難関が待ち受けておりました。
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鍵が無い。
ここ南アフリカはほぼ全ての家に
鉄格子のゲートと有刺鉄線で囲われています。
それを開ける鍵も無いので敷地内に入ることもできない。
宿といってもホームステイだったのですが
宿主はまだ帰宅していない様子。
まだ8時過ぎだがあたりは真っ暗だ。
スタジアム徒歩3分だが閑静な住宅街であたりには人っ子一人いない
いつ帰ってくるのか分からないまま
ここで待つのは危ないしもしかしたら届けられてるかもしれない。
僕らは踵を返しスタジアムへ向かった。
次回 ~vol2真夜中のスタジアム~ に続きます