いつものごとく子供達の可愛さにメロメロになりながら
毎日を過ごしていると少しずつだが色々見えてきた事がある。
まずここは「もの」には困っていないということだ。
ペンや文房具、絵本からおもちゃでいっぱいの棚が
建物のあちらこちらにある。
すべてフランスから、又は現地を訪れるツーリスト
からの寄付品とのことだった。
モニクの家の僕らの泊まらせてもらった部屋も
そういったグッズであふれていた。
(キレイに陳列されていたがほぼ新品のまま。使い切れていないようだ。)
では運営上の課題は何かというと
やはり「人」に関するものだと言う。
まずは現地の親達の理解。
現在26名の生徒が在籍しているが
毎日来るのは20人弱といったところ。
子供達はあきらかに幼稚園を楽しんでいるのだが
親が行かせないケースがあるのだと言う。
欠席を減らすために食事を提供したり
(インドではこれが効果的という話だった)
ペアレンツミーティングを月に数回開いているが
その参加率も低くなかなか成果が出ないと言う。
(食事の用意は親達にお願いしているがなかなか来てくれないそうだ。
唯一てつだってくれているのはアルーシャのお姉さんのハナ。)
背景にはそもそも親達は教育を受けておらず
教育の重要性を理解していないという事があるのだが、
同時に「白人の学校」といった距離感があるように感じた。
(すぐ向かいにある幼稚園は英語も教えないし授業料も高いのに
そちらの方が人気があるという話も聞いた。)
これは1ヶ月この国を旅行をする中
いたるところで感じたことだが、
明確な「Black or White」 という
差別/区別意識が国中をおおっている気がする。
例えばエリアや町によって白人と黒人の数が全く違うし
同じ町の同じ店に双方がいたとしても
一緒のテーブルに座っている事をみることはほとんど無かった。
白人によって虐殺されたり僻地に追いやられたという記憶や、
アパルトヘイト終了後の逆差別政策(黒人の優先雇用等)など、
理由は歴史の中でいくらでも見つけることができるが、
一旅行者としてここまで明確に歴史の重みを感じたことはないだろう。
授業終了後に子供達を迎えに来る親達や
近所の人々との会話の中で
どこかよそよそしさを感じることが多々あったのだが、
親達の学校への理解や協力を得る難しさの根底には
そういったものがあるように感じた。
(学校の周りの風景。黒人居住エリアでモニク宅のある白人居住区とは雰囲気が全く違う)
そしてもう1つの課題は先生の質の向上。
2人の先生、アネリーンとロザリーンは感じが良いし
授業も毎日しっかりやっているように見えたが、
モニクいわく色々問題があるとのこと。
その一端は最終日に垣間見えた。
何時になってもロザリーンが来ない。
無断欠席だ。
よくある事では無いらしいが
貸したお金を返さないなどトラブルは他にも色々あると言う。
ナミビア人は金曜日は既に週末と思っているような所があり
生徒もいつもの半分くらいしか来ていなかったのだが、
としても先生は2人しかいないので無断欠席の影響は大きい。
とにかく常識そのものが、違うのだ。
仕事に対する意識という意味では、
失業率も関係あるのではないかと思う。
この国の失業率は外務省の資料では20%とあったが
現地の人の話を聞くと60%にも上ると言う。
確かに町はヒマそうな男達でいっぱいだ。
そんな中、「仕事がある」というだけで満足があり、
クビにならないレベルまで頑張ればそれでよくて、
そこから上の「仕事を通じた自己実現」
という所まで欲求が行きづらいのではないだろうか。
結果、仕事のやりがいとか誇りとか生徒の将来のために、
という意識が薄くなってしまう。
あくまで感覚だが
そういったメカニズムが起きている気がした。
かと言って替えのもっと良い先生を、
なんていうソリューションは勿論ここにはない。
そこで僕らは、彼女たちが自分の仕事に誇りを持つのに
少しでも助けになれば、との思いから、
滞在期間中彼女たちの写真をできるだけ撮って
それをプリントアウトしてプレゼントする事にした。
(アネリーン。毎日元気いっぱいのお姉さん格。)
(ロザリーンは元々は掃除手伝いだったのだが 才能を買われて先生に昇格したらしい)
僕らにとっては、インド、ネパールに続く
「5,000円で何ができるだろう?」企画の第4弾だ。
(実際かかったコストは印刷代の約2,700円となった)
正直企画としての新しさは無いけれど、
現場を見れば見るほど
生徒に直で触れ合い、
またローカルであり親達との距離も近い
彼女ら先生の重要性を感じたため、
やってみることにした。
またこの「ローカルであり」という点は、
インドやネパールでは現地のソーシャルワーカー
によるプロジェクトで感じることは無かったのだが、
外国資本の国際協力において最も大切な事だと
今回改めて感じた。
そのプロジェクトが本質的に、継続的に、
現地の人々や子供達の未来のHOPEとなるためには、
ローカルが主体になっていく事が間違いなく必要であり、
そうなるための仕組みを作ることや
ローカルの事を本当の意味で深く考え、理解していくことを
支援側は常に意識していく必要があると思う。
(「子供達の未来はあなたの手の中に、誇りを持って」とメッセージを添えてこれを贈った。)
残念ながら時間の関係で直接手渡すことはできず
モニクに託すことになったが、
これを見てモニクはエキサイトして喜んでくれた。
子供達を毎日しっかり教えてくれていること、
一緒に時間を過ごさせてもらったことへの感謝とともに、
彼女たち2人に僕らの勝手な思いが少しでも届けばと思う。
最後にもちょい子供達の写真を。何故か赤ちゃんのマネキンを抱いて。
授業前と食後はいつも庭の砂場で遊びだす。
気付いたら「ブーン ブゥーン!」と運転手ごっこ。かわいすぎ。
最終日に完成したジムの上に乗って。手前で泣いてるのはナオミ。
そのナオミはずっと美和に甘えていた。抱き上げてすっかり母の気分の美和の目は遠い。
僕に泣きついてきたのはビートリス。みんなすっかりなついてくれた。
また会いに来るよーと心の中で思いつつ、1週間でお別れをした。