びっくりした。
地面がでっかくて。
何にもなくて。
誰もいなくて。

だだっ広い荒野に
コロンと放り出された
石っころのような私たちだった。


きっとこんなちっぽけな私たちは簡単に
ぴゅーと吹き飛ばされてしまうし
なにかにくちゃっと踏み潰されてしまう。


果てしなくて、途方もなくて、
恐ろしくて、絶望して。
でも次第にゾクゾクしてきて、
手のひらをこすり合わせた。
冒険の勇者になった気分で息を吸い込む。
ドラクエ(Ⅰ)のテーマソングに合わせて進む。

それが
ナミビアだった。

「良い予兆を見逃さないようにしなければ」。
車が壊れたのは、きっと
南アに戻ってはいけないと
冒険を続るべきだと
そういう意味なんだ。


大きな力、自然の力に逆らわず
コロコロと転がってみよう。
耳をすましてさえいれば
何かにコツンとぶつかるはずだ。

私たちは
太陽と星の位置を頼りに
赤道に向かって北上した。

 
 
 
 
 
「まっすぐ生きてたら、つながる」。
仏教では因・縁・果と説かれている。
因果の間に「縁」がある。
縁を呼ぶ因とは何なのだろう。
 
こういうことかもしれない。
自分が何かの周波数を発したら、
必ずキャッチしてくれる人がいる。
いや、逆かもしれない。
自分がアンテナを立ててたら、
たとえ微弱な電波でも見落とさず
掴み取ることができる。
「あ、この人だ」と。
 

旅の中だけではない。
出会いは、不思議な導きによるように見える。
でもそこに、自分の在りようが
何がしか関わっているのかもしれない。

だとしたら今日も明日も、
せめて、「いい顔」で
前を向いていたいと思った。


それが
ナミビアだった。


すれ違っていたかもしれない人たちとの
奇跡的な出会いと、
どこの何人とも知れない私たちへ贈られた
彼らの優しさに、
胸がいっぱいになっていた。
 
 
 
 
 
砂山の上を歩くのは大変だった。
1歩進むごとに足をとられ私は
上手く進めなくて途方にくれた。
そこで勇輝の歩く足跡をなぞっていったら
あまり埋まらずにうまく進めた。

そういうことかもしれない。

私たちはもう何年も前から
共に冒険の道を行く相棒だったんだ。
二人の進路も関係性も日々更新されていて
今在る二人は決して結婚式の日と
同じ二人ではない。

これは決して悲しいことではなく
素晴らしいことなんだ。
だってそれはいつでも、いつからでも、
良く変化していける、創っていけるということだから。

見失ったら何度でも作戦会議を開く。
二人が描いている地図の
今どのへんに居る?

ポジティブにもネガティブにも
お互いの顔ばかり覗き込んでいては進めない。
つないだ手を離さずに、
一緒に前へ一歩踏み出さなくては。


静かな日も、激しい日も、退屈な日も、愉快な日も。
止まるときには一緒に止まる。
寄り道したくなったら一緒に回り道。
ときには一緒に袋小路。もと来た道を逆戻り。
 

手を離してはいけない。
どうしたって助け合わなくちゃいけない。
ときにリードしたりフォローしたりしながら
悩んで、工夫して、
温めあって、強くなって。



それが
ナミビアだった。
 
私たちはなかなかいいコンビじゃないか。
 
 
 
 
 

旅を続けよう。
 
(MIWA)