南ア、プレトリア。
ワールドカップ日本戦の2日前。



宿に、生まれて一週間の赤ちゃんを抱いた
住み込みの女性がいた。
彼女は最近まで5年ほど山に篭り、
完全に自給自足の生活を仲間と送っていたという。
ヒッピーのユートピア的コミュニティだろうか。
その彼女との話で盛り上がったのは、
生活の中での、自然と文明のバランスの取り方についてだった。

彼女は、100%文明をシャットダウンして生きるのは
それはそれで無理があると気づき、これからは
自然をベースに文明をうまく取り入れていきたいと言った。

私はその逆の道順なんだけど、
すべてがオーガナイズされた都市にずっといて
旅をする中で自然側に歩み寄っている感覚があると話し、
お互いなんだか納得して握手した。


この時の会話は
アフリカ大陸を移動しながら
何度も思い出すことになった。



 

バックパック1個に収まる物しか持たず、
限られた予算で旅をすることは
必然的に工夫と応用力を鍛えてくれた。


インド、アジア、 中東までの私たちは
何度となく自分たちにこう言い聞かせてきた。
「足るるを知る」。
不便な環境でも文句を言わない。
荷物を増やせないから、あるもので我慢する。


今、アフリカに入り、約2ヶ月が過ぎ、
こう言いたくなっている。
「知恵を使って生きる」。
不便な環境は工夫して快適にする。
限られた材料で物を作り出して楽しむ。



旅のスタイルが変わったのが
1つの因かもしれない。
今までなかった自炊とテント。


自炊は、手に入る食材を使って、
宿にある道具の中でやるしかない。
料理の腕云々の領域ではなかった。
最初は時間がかかりすぎたり
毎日同じようなものしか作れず苦心した。
でもだんだんコツを掴んでいった。
ザルがなくても、鍋が1つでも、
いけるもんだな・・・。

(↑パサついたお米でもビリヤーニなら美味しくできると発見。
メインの食材がキャベツって日が続いても何とか味で工夫。この日は味噌↑)


テント泊は、
今までのゲストハウス生活に増して
設備の無い中で工夫が強いられた。
テントを張るにも洗濯物を干すにも
石や木の枝、ビンやひもを手に取り
試行錯誤する機会が増えていった。


毎日ちょっとずつ、
小さな発見があり進歩があり
それはもしかしたら
都会人を原始人に戻そうとする
トレーニングのようなものだったのかもしれない。


 




アフリカに入ってから目につくようになった
リサイクルアイテム。
最初は、エコを売りにした土産物、
くらいにしか思ってなかったけど、
素敵だなと思うものがあまりに多くて、
意識が変わっていった。
インテリアって、手作りできる?
・・・んだ!

もちろん観光客向けに、「アフリカ風に」
ワイルドなテイストにしているという部分もあると思う。
でも、それらはやっぱり
あったかくて、それでいて
ワクワクするような刺激があるものたちだった。




ある日。ナミビア、スワコッップムントの宿で。
広間のテーブルにどかんと
「ご自由にお編みください」的な毛糸と編み棒があった。
なんじゃそりゃと思いつつ、
懐かしくなって手にとってみた。
中学生のときハマった編み物。
社会人になってからは
そんな時間のかかる趣味、
もったいなくてありえなくて
見向きもしてなかった。
大切な時間と手間をかけて、
店で買うよりお粗末なものしかできないなんて。

手にとると、自分でもびっくりしたんだけど、
手が、編み方を覚えていた。

最初の編み目の作り方、表編みと裏編み。
驚くほど夢中になって編んだ。
スワコップは寒くて風が強いから、
思いついたのがヘアバンド。

やってみたら、なんてことはない。
「いいとも」と「ごきげんよう」をダラーっと観てたら終わる、くらいの時間で
1個、自分の手で物を作り出せた、
ささやかだけど確かなヨロコビがあった。








東京での引越しの度に。
部屋が決まったら100均に行って、
とりあえず買っていた石油製品たち。
洗面器、歯ブラシホルダー、石鹸ホルダー、トイレ用品、キッチン用品・・・。

「ナチュラル派」とか「オーガニック志向」とか
そういうんではなくて、
なんかもういいやそういうのって思えてきた。



引越しのときだけではなくて、
「あ、こういうの欲しいな(必要だな)」
って止まったとき、
これまでの私はお金で解決する発想だった。
「じゃあ買ってこよう」。
それが100均になるかフランフランになるか、発送まで頼むか、
の違いしかなかったそこには。
東京での生活は、
何かの用途に最適なモノを手に入れることができるのは当たり前で、
どのクオリティ、ブランド、テイストがいいか
「選ぶ」のが楽しみだったんだと思う。


選ぶのももちろん楽しいこと。
でも作り出す楽しみもあるんだと改めて知った。
「じゃあこれを使ってみよう」。
「じゃあこれで作ってみよう」。

それは節約のためというより、
エコのためというより、
なんだろう、精神の健全さのためっていうのが近い気がする。




アフリカでの日々、というかトレーニングで、
「知恵」というものの
“存在”の再確認をした。
言葉は知ってたけど、
自分も持っているもしくは出せるものとして
意識してこなかった気がする。


すると勇輝が手帳に
「知識」「ノウハウ(スキル)」「知恵」って
少しずつ重なり合う3つの円を描いた。
私たちは今まで、知識とノウハウばかりを
一生懸命強化してきたんじゃないかな。


知恵を使って生きる、というのはワクワクすることだ。
栓抜きがなくても、テコの原理を覚えてなくても、
手の感覚と力の入れ具合がつかめれば
ビンはライターでもスプーンでも木の棒でも開けられる。
もっと、子供のように、色んな物に触って、曲げて、伸ばして、
確かめてみたくなった。
知恵は人間のフィジカルな部分と
相性がいいのかもしれない。

とにかく、これからの人生で
「○○がないから××できない」
っていう発想自体をやめてみたいな、と思った。


 


(青年協力隊タケシさんの家は工夫がいっぱいだった)

(街中、インスピレーションの宝庫。自転車でニワトリを運ぶカゴ、
なんて売ってないから手作り。)

(布はほんとになんにでも使えるんだな。私もやるよ!赤ちゃん背負うよ!)


次にどこかに居を構え新しい生活を始めるときには、
石油でできたものを半日で揃えるのではなく
木の枝や石を拾ってくるところから始めて、
(ちょっと無理があるかもしれないけど・・・)
とにかく、継ぎはぎでもいいから
時間をかけて、ゆっくり住まいを設えてみたい。

今までに戴いた思いのこもったプレゼントや、
新しく自分たちで作ったもの、
そしてこの旅で見つけた宝物に囲まれて、
(子供たちと一緒に)
頭と手を使って、知恵を鍛えていきたい。



(すごくうどんが食べたくなって東京で買ってこなかったことを後悔してた。
けど、なら作ってみればいいじゃん!ってことで)

(うーん、ちょっとボソボソしてたけど。うまかった!)


・・・

文章にするとあっけないけど
今までまったく意識してなかったから
これは大きな価値転換だった。

旅の中で思考がシンプルになり
「大事なもの」が減って研ぎ澄まされてきていると以前書いたけど、
久しぶりに「大事なもの」の棚に
新しく価値が入荷した。

 


面白くなってきたぞ。


 


(MIWA)