マチュピチュのツアーでは、
景色や感動の他にもう1つ収穫があった。
「kiva」というマイクロファイナンス*1のNGOで
ボランティアをしている1人のアメリカンとつながった事だ。
そう、巨大M&M袋を抱えジーパンスウェット姿で
アメリカ代表のプライドを守った、エリック22歳だ。
*1
貧困者層向けに数万円~の小額の貸付けなどを行うことで
経済的自立を促す金融サービス
マチュピチュからクスコに帰った僕らは、
彼にお願いしてその現場を訪問させてもらう事にした。
少し長くなりますが、写真+キャプションで簡単にレポートします。
とても感動したのでマイクロファイナンスだNGOだに興味の無い方も
是非読んで頂ければうれしいです。
*
乗り合いバンで近隣の村に向かいながらヒヤリング。
ふむふむkivaはネットを使って世界中のお金を借りたい貧困層と
世界中の支援者をつなげている巨大NGOで、
現場での運営はパートナーとなった現地のNGO「アラリワ」が行っているのか。
それはそれは美しい景色の中、
それはそれはラフな運転で走ること40分。
今回バンクミーティング*2の開かれるウルバンバ村へ到着した。
*2
多くのマイクロファイナンスでは、貸付けの対象を個人ではなく、
10-20名規模の「バンク」というコミュニティとしている。
バンクメンバーの1人でも返済ができないと
連帯で責任を取る契約とすることで高い返済率を実現している。
バンクミーティングは月1回、バンクメンバー全員とアラリワの貸付担当(ローンオフィサー)
が集まるもので、毎月の返済やビジネス研修などが行われる。
他の村もそうだったが、ちゃんと建物はたってるし
アフリカやインドで見たような「村!」という貧しさは感じない。
今回訪問したアラリワは4つの事業を行っているクスコ拠点のNGOで、
設立から30年以上たっている。
事業はマイクロファイナンス(左下)の他、農業や漁業なども行っているよう。
しばらくして主役となるアラリワ貸付担当のフレッドが到着。
すぐに会議が始まった。司会進行はフレッドが行うとともに、バンクのリーダー、
秘書、会計係などが前方で書記をしたり数字の管理をしている。
後方にはバンクメンバーが6人ほど。
写真はエリックが自身と僕らを紹介しているところ。
因みにマイクロファイナンスでは、就業機会の少ない女性が大半の貸し出し先となっている。
ミーティングは会議というより1人1人と返済&面談を進める形だった。
子供が写真に入ってきちゃうような環境だけど、
皆その表情は真剣そのものだった。
その間エリックはkivaのための現地フィードバック作成のためインタビュー。
kivaはクライアント(借り手)1人1人にページをつくっているが
webの出来は素晴らしいと感じた。
ちなみに今回のメンバーの1人セシリアのページ。
僕もエリックに通訳してもらい色々聞かせてもらった。
質問先は上記セシリアさん、借りたお金を使って食用ネズミの餌を買うとのこと。
Q:何故マイクロファイナンスでの借り入れをしていますか?
A:日々の生活のため。夫の仕事と自身のやっている学校教師の給料だけでは
暮らしていけないの。何をやるにも元手資金が必要になるので、非常に助かるわ。
Q:生活費はどれくらいですか?また何に一番お金がかかりますか?
A:うちは家を持っているから家賃が無いのだけど、月間2,000ソル(60,000円)くらいかしら。
3人いる子供達の教育費や、クスコの外の大学に行っているのでその仕送りの負担が大きいわ。
Q:マイクロファイナンスが無かったら生活はどうなってると思いますか?
A:とても厳しい、苦しくなる。それに、村には窃盗などの犯罪が増えると思うわ。
Q:5年後、10年後の夢を教えてください。
A:・・・・(はて?という沈黙)
Q:お金に余裕ができたら、何をしたいですか?
A:・・、あ、旅行がしたいわ。他の国に行ってみたいわ。
国は、、そうね、イタリアとかかしら。勿論、日本もアメリカも(笑)。
(これについては他のメンバーからも多数同調がありあたしは何処、などと少し盛り上がった)
皆お母さんのため子供づれ。会議中も子供達は騒ぎたい放題だったけど、
なだめながら長い時間会議に集中している姿は印象的だった。
保母を母に持ち大の子供好き、バルセロナ以降にわかに出産欲求の高まった美和は、
会議が進む横でにわか保母さんとなっていた。
折り紙は素晴らしいコミュニケーションツールだと心から思う。
ちなみに「ORIGAMI」の認知度はワールドワイドです。
各人との面談も終わり、会も終盤に。
丁度半年のローンサイクルの終了したところとのことで、貸出額や返済額、
それに罰金や積み立てなどの合計がホワイトボードに書かれる。
するとにわかに場がエキサイトしてきた。
どうやらミーティングには来ていないメンバーの1人が
返済をしていない事が判明。
彼女を紹介したのは誰だ、どうする、などの話をしていたようだ。
しばらくすると1人の男性がミシンを持ってきた。
コミュニティで所有するこのミシンを売りに出して
補填の一部としようという話になったようだ。リアル。
その後は次のサイクルでも借り入れを希望する人を募り(ほぼ全員が希望)、
次のプレジデントなどの役職者を決めて、連絡網という名の責任分担などを決めていた。
終了の挨拶や掛け声も無いまま何となく人がバラバラ立ち上がり、
署名をして、会はお開きとなった。開始から約3時間、お疲れ様です。
会が終わりクスコへ帰る途中、エリックとフレッドとご飯を食べようかと言う事に。
行った先は1つの屋台だった。
なんとそこは今回のミーティングに参加していた夫婦の営むお店だった。
ミーティング終了後まだ15分くらいだろうか、既に働き始めていた。
両親がいない間は13歳の息子とお姉さんで切り盛りしていたようだ。
子供の労働は議論があるところだろうが、家族一緒で仲良くて、楽しそうだった。
簡単なスープそばとハンバーガーを売る屋台。
これと近くに生活雑貨屋を1つ営んで生活しているそうだ。
例えば屋台は約1,000ドルと言っていたけど、
そういった元手のためにマイクロファイナンスが活用されている訳だ。妙に納得感。
その後乗り合いタクシーに乗りクスコに着いたときはもう10時をまわっていた。
*
今回、特に印象に残ったことが2つある。
1つは、貸付担当フレッドの姿だ。
アラリワでは、貸付担当1人あたり
およそ20バンク250人のクライアントを持っているという。
今回のようなバンクミーティングを、
時にはクスコから数時間かける場所で、
ほぼ毎日こなしていると思うと、
そのハードワークぶりには頭が下がる。
小学校の一教室でジャケットを脱ぎシャツの腕をまくり、
村のお母さん達にお金やビジネスのいろはを教えるフレッド。
その姿を、何も知らないけど戦後の銀行マンのイメージと重ね、
なんか、ぐっときた。
社会の底上げ。
言葉にするとフっと消えてしまいそうだけど、
こういう頑張りにより、少しずつされているのだろう。
そしてそういう仕事をしている彼らのような人達こそ、
ソーシャルワーカーなんだろう、そう思う。
もう1つは、全体としての、素朴さ。
村の雰囲気を見ても借り手であるバンクメンバーを見ても、
上述の通りアフリカやインドのような強烈なインパクトは無い。
でもみんな、生きるのに子供を育てるのに一生懸命で、
夢(?)は旅行に行くことで。
言葉のイメージやメディアで見てきたものほど、
「poverty」「貧困」の現実は派手じゃないのかもしれない。
自身のイメージと彼女達の姿には正直ギャップがあった。
でもそこには必ず、それぞれの環境で毎日を生きる人がいる。
インドの現実。アフリカの現実。
そしてペルーの、クスコの近くのある村の現実。
心に刻み込みました。
*
マイクロファイナンスについては、
最近ではインドで債務過多からの自殺者が出たニュースもあったが、
他も含めて色々課題も多いようだ。
ただ貧困層の経済的自立を促すための手段のひとつとして、
素晴らしいものだと心から思える。
エリックの所属する「kiva」の米国での高い知名度もそうだが、
なにより、現地にそれ(お金)を必要としている人がいる事、
それにより救われる生活があるという事を信じられる。
また、寄付と何が違うのか?などと言う疑問も、
継続的に考えていきたいトピックとして自身の中に生まれた。
エリックと議論したところでは、現時点で下記のような整理。
①関係性:寄付だと生まれ易い「あげる側・もらう側」という上下関係意識が生まれづらい。
②貸し手の関与度:返済まで一定期間、情報交換が必ず生まれる。
③受け手のメンタリティ:返済義務により努力が必須、「貰って当然」になりづらい。
インド以来のソーシャルトラベルプロジェクトでは
寄付的な活動が多かった僕らにとって、
新たな気づきがあった事は間違い無い。
まだ自身の関与の仕方は分からないが、
課題やマイナス面を挙げるだけではなく、
解決策やプラス面、夢やHOPEを考えるような、
そんなスタンスで向き合って行きたいと思う。