気がついたら、アフリカ大陸の端っこまで来てしまった。
自分でもまだ、信じられない。
アフリカ人でいっぱいの街(当たり前)、
でも自分が持ってた“アフリカ”というイメージとは全く違う、
歴史ある建物、洗練された店舗、美しくヨーロピアンな街並み、
しかも季節は冬、そしてワールドカップという特別なムード。
日本戦の熱にうかされて
それが冷めてあたりを見回してみたら
まだよく理解できていなかった。ついていってなかった。
・
・
アブダビとイランを振り返っている。
あの時間が、経験が、私たちにもたらしたものは何だったのか。
楽をして気をゆるめてヘラヘラ楽しんでいたアブダビと、
お金をおろし忘れた大失態でバタバタしたイラン、という
記事しか投稿していなかったが、
私も勇輝も、「ん?何かが、変わった・・・?」と思えるほど、
心の中に新しい刺激があった。新しい養分が吸収された。気がする。
アブダビでの、デイル。そのお仲間。毎日毎晩の語らい。
イランでの、ホセイン家、サイード家とその仲間、旅人たち、との出会い、時間。
心をひらく、受け止める、HAPPYに生きる、家族とともに・・・
キーワードはたくさんあるのだけど
今まで2人でホテル生活していた旅のスタイルとは違う、
誰かとディープに“つるんだ”からこそ得られたものがたくさんあった。
まずアブダビ。デイル宅の奥さん、エツコさん。
北海道に帰省中であった彼女の不在中にお家に居候することになり、
当初私はかなり恐縮していた。
デイルに電話を代わってもらったときの第一声。
「引き出しも戸棚も全っ部自由に開けて、何っでも好きなように使ってね!」
文字にすると難しいのだが、「全部」とか「何でも」とかにすごく強調が入った、
それでいてめっちゃ明るい、ハッピーな声。
この第一声で、一発で、私はまだ見ぬエツコさんにヤラレてしまった。惚れてしまった。
「なーーんにも気にしないで!自分の家だと思って!」
心から本当に思ってないとこの感じは出せない。
電話を切ったあと、私はすごく安心し、優しさに包まれた気分になっていた。
こんなこと、私は、言えるだろうか。
正直、そう思った。胸にささるものがあった。
自分が居るならまだしも。面識があるならまだしも。
あの声には、彼女の持つ器の大きさと根っからの明るさ、
夫が招き入れた人だからという絶対の信頼、を感じた。
かっこいいぜエツコさん!
しかもその、「自由に使って」の1つ、台所。
これは料理が好きな人しか分からないかもしれないが、
ため息が出るほどに、完っ璧に整理されたキッチンなのだった。
何がどこにあるか、分かりやすく、料理をする時の動線にあわせて
必要なものがすべてあるべきところに揃っている。
しかも物が多すぎない。シンプル。
私のかつての台所のようにめったに使わないものまでごちゃごちゃいっぺんに入っていない。
調味料も乾物類も「これはここかな・・・」ってところにすべてある。
キッチンを見て、持ち主の知性を意識したのは初めてのことだった。
ああ、こんなキッチンにできる女になりたい。あんなこと言える女になりたい。
エツコさんのことを考えると、なんでだろう。
心がふわーっと広がる。空とか海みたいに。見晴らしがよくなる
(デイル宅の寝室にあった、結婚式の写真。)
。
。
彼女は私と同い年。9歳と4歳の娘の母だ。
第一印象は、静かで美しい人。
決して愛想がいいタイプではないと思った。
なのに、とっつきにくいとかでは全然ない。居心地がいいのだ。すごく自然なのだ。
客観視してみれば、夫が突然ワケ分からない日本人拾ってきて家に泊めようなんて、
しかも自分は言葉が通じないし、夫は毎日仕事に行くし、
お小言の1つも言いたくなるかもしれない。
なのにファザネからはまったくそういうオーラがないのだ。
私達がイスファハンに出るときには、でっかいサンドイッチと野菜と果物、
こちらがもういいもういいと制するのに、いいからいいからとじゃんじゃん袋に詰める。
塩なんて容器ごと入れる。紙ナプキンなんて私が数枚でいいと言うのに1束ぼそっと。
こういうの、かっこいいなと思った。
受け取ったでっかい袋を抱え、「だってこれ、金額にしたらいくらよ・・・」なんて
頭の中で換算してるみみっちい私なんかと比べて、
ファザネの穏やかな笑顔は爽やかな風が吹いているようで、ああ・・と感服した。
実はおちゃめなファザネ。
実は昔ブイブイのギャルだったことを匂わせる(ズンズン系で踊るとことか)ファザネ。
子供達の話を静かに聞くファザネ。
片言の「オツ カレ サマ デス。」をメモを見ながら言ってくれたファザネ。
あんたが好きだよ!と思った。
最後、髪の毛の悩みについて二人で話したんだけど、私はワカメがいいと勧めたんだけど、
そんなガールズトークを、ホセインさんの通訳を介してしなくちゃいけなかったのは
ちょっと寂しかったね。
現地の言葉をこの時ほど話せるようになりたいと思ったことはなかった。
ファザネを思い出すと、心の中に凛とした風がふく。
。
。
お金がないピンチを聞いてまゆちゃんが紹介してくれ、
メールをしたら2つ返事で早速ご自宅に招待してくださった。
たくさんのお友達も集まって、日本戦観戦&日本食パーティ。
サンドイッチとケバブにヤラレていた私たちを見透かしていたような。マジ感激だった!
子供達にはいっぱい遊んでもらった。
マグネット式の着せ替えにはかなり興奮して本気で遊んでしまった。
キャー!この服も可愛いーー!!!
勇輝もディーナちゃんと一緒にお絵かき。本当に嬉しかったようだ。大切にとってあるよ。
おめかしのラーナちゃん。僕、寝たいよ、と、さんちゃん。(可愛すぎて悶えました。)
ナコさんの夫、サイードさんはもとプロサッカー選手。今もイランのチームで現役。
からあげとかそうめんとか魚とかおにぎりとか、おなかいっぱい食べて、
みんなとおしゃべりして子供達と遊んで、気づいたらタクシーで帰らないといけない時間。
ホセインさん宅にちゃんと帰れるかな・・タクシー高いな・・なんて考えてたら、
「泊まっていったら?うん、それがいい!」と。
このあと、歯ブラシをもらって着替えを借りて、夫婦の寝室の大きなベッドに寝かせてもらう。
自分達一家はリビングで布団を敷いて。
「いつもこっちなの。気にしないでね。ゆっくり休んでね」
ベッドの中で、じーーーんとしていた。
そしてすごく安心していた。あったかいなあ・・・。
かわいい2人の娘。すっごくいい子。バス停までお見送りしてくれた。ありがとう。
(勇輝は、父・サイードさんの叱り方(めちゃ怖い)に感銘を受けていた。
オレもあんな父になりたい!そして娘が欲しい! だって。)
あの包容力ってどこからくるんだろう。
まったく不思議なのだ。
甚だ迷惑なドタバタ夫婦の勝手なお願いにも関わらず、
素晴らしいパーティを用意してくれたバイタリティ。
集まってくださった素敵なお友達の皆さん。
気を使わせずにさらりと優しくできるあの感じ。
あと、それだけじゃない。
ナコさんを前にすると、なんだろう。安心してしまう。
いろんなことを全部話したくなる、聞いてほしくなる。
自分の汚い部分とか、今まで辛かったこととかも全部。
それにしては、時間が足りなくて、全然ゆっくり話せなくて、それがただ残念だった。
居酒屋で3時間、独り占めして貸しきりたい女、そんな人なのだった。
イランの人と結婚してイランに10年住んで、子供を産んで育てて、
文化宗教政治の違い、制約の多さにきっと大変なことだらけだろうに、
でも受け入れて楽しんで、前向きに笑っている。
彼女も、異国の地で闘う、いわば日本代表のひとりで、
多くの人には知られてなくても、キラキラ光を放っていて、
その姿は眩しく、頼もしく、同じ日本人として誇らしく、思えた。
ナコさんを思い出すと、心の温度が上がって、あったまって、ほくほくする。
誰かに優しくしたくなる。
伝記や名著を読むのとはまた違う、大きな、実になる学びが
リアリティと立体感と存在感を持って得られるから。
経験を積めば積むほど、自分という人間が確立されていく程、
グっとくる同性に出会うことって少なくなっていく。
と、思いがちだけど、
本当は自身の謙虚さと関係があるんだろう。
オトナになった、という名の傲慢さと非寛容が
知らない間に充満してしまった体内をよく換気し、
未熟な自分を(卑屈ではなく前向きに)認識し、
何事も瑞々しく吸収し「1つ勉強になった。有難い」と手を合わせる。
こういう感じ↑で生きていきたいな、と思った。
ありがとうございました。
かっこいい、女になろう。
(MIWA)