皆さんの期待に反してちょっと重めのイラン回顧です。
「ありえない・・・・」
ずっと眉間に苦々しい皺が寄っていた。
情報収集不足で知らなかった私が悪いとはいえ、
これはひどすぎると、憤りがつのっていくばかりだった。
首を流れる汗の粒とワキ汗(※密かに女子にワキ汗を流行らせようとしています)、
「ありえない・・・」というつぶやきはずっと止まらなかった。
身体のラインを出しちゃだめ=丈の長いゆったりした上着、
髪や首元を出しちゃだめ=スカーフ、
くるぶし見えちゃだめ、サンダルもだめ、
婚前交渉もだめ、飲酒はもちろんだめ、
自転車に乗るのもだめ、競技場でのサッカー観戦もだめ・・・。
これが家でのしつけならいいでしょう。
「好ましくないとされている」っていう文化・風習でもいいでしょう。
ありえないのは、それが国の法律で定められてるってとこだ。
(当然ショッピングも盛り上がらない。心なしかマネキンもオラオラ顔)
(映画やTVドラマも、女優が肌を出せないので設定が難しそうだった。
ボンドガールも峰フジコも無理。キスシーンもラブシーンも無理。
男性が主人公のシリアス物やコメディが多かった。製作側も大変だな。)
(広場にあった無料のレンタサイクルサービス。私は女だから借りられなかった)
外出のとき、4歳のマエデは肌も髪も出したままなのに対し、
9歳のファテメは長袖を着、スカーフをかぶる。
ホセインさんに聞くと、定められた服装、「ヘジャブ」は9歳からだという。
ファテメはこの先の人生、スカーフを手放せないのかと勝手に暗い気持ちになる。
なぜ9歳からかと聞いたら、昔のイスラム法で婚姻は女子は9歳から、
つまり9歳から少女は<女>とみなされていたためだと。
当時は多妻を持つ男性も多かったが、今は婚姻も18歳からになり、
複数の妻を取るのは相当のお金持ちだけだし、それには本妻の承諾が必要となったという。
(まあ、お金持ちの中には内緒で若い子を囲ってる男も多いけどね・・・と。)
なんだよそれぇー。と思った。
イスラムの教えとか法とか言うけど、結局、
男の都合のいいように女を扱っているだけじゃないか、と。
もっと言えば、男のあらゆるフェチズム満載じゃないかって。
若くて誰の手垢もついていない処女を妻にして、
外出時は他の男に顔も肌も見せないようにして、
自分だけのものっていう満足感を得て、
自分は、他にも女を作ってよくて。
女の人生は、男への貢物か!って。
チキショーーーーー!
「私たちも大嫌い」
「暑くて倒れそう」
「こんなの脱ぎたい」
「政治家がバカなの」
「旅行者なのに、ごめんね」
そうだよね、そうだよね。
よかった。やっぱそうだよね。
いや、こちらこそごめん。
私はこの国を出れば済むわけだから。
あんたたちはずっとだもんね。
おしゃれしたいよね。
女子の最大の楽しみとも言っていいおしゃれ、ファッション。
これが奪われる絶望感ったらないと思う。
まだ幸せなんだと思う。
(国はそうしたいのだろうが)イランには情報は入ってくる。
正規ルートのものなら映画も雑誌も広告もスカーフ姿の女性しか出てないが、
たとえば街には海賊DVDが出回っていて、数十円で買える。
そこには、肌をあらわにし、さまざまなヘアスタイルの女性が登場する。
映画には、ロマンチックもしくは過激なラブシーンもある。
ネットにはユーチューブやツイッターはじめ様々規制がかかっているが、
まあ結局なんだって見れてしまう。
こういう刺激がありながら、自分はできない、というのは苦しいことだと思った。
(シールにもファッションへの憧れが見てとれる)
毎日炎天下を歩きながら、
プリンセスプリンセスの「ダイヤモンド」が何度も頭の中でリフレインする。
「好きな服を着てるだけ~悪いことしてないよ~」
のん気な歌である。
好きな服着てるだけで、ポリスに捕まるよお~。
切実である。
でも、どんな厳格なお嬢様女子高でも、
規則が厳しければ厳しいほど、破りたくなる。
実際、トンでる女性たちはスカーフをできるだけ後ろにずらし、
盛りに盛った金髪の前髪を輝かせていた。
化粧も(もとの顔が派手なのに)バキバキで、
コートはわざとタイトなものを選び、
ぎゅっとベルトをしめてくびれを演出していた。
警察がいたらサッとスカーフを深めにし、ベルトをゆるめるのだという。
(規則を破る方向性がなぜか一律ヤンキー方面なのは面白かった。)
また男性たちに関しても、男子校を思い出させた。
禁じられれば禁じられるほど、男子は女子が気になる。
それが思春期である。
実際、地下鉄の女性車両と男性車両の連結部分から
男性たちの刺すような視線の束が熱を帯びていて恐かった。
人ごみでの痴漢行為も多いという。
イランではこの高校から出られない。
風紀が乱れるという理由で、自分たちの良識に任せてもらえない、
いつまでたっても信用してもらえない、ってのも悲しいなと思った。
(ホセインさんとファザネの結婚記念写真。顔見えん!)
(こんなに美しいのに、限られた人にしか公開できないとは・・・)
・
・
イランに着いてから1週間ほど、
私はずっとイライラ、モヤモヤしていた。
ひどい顔をしていた。
ヘジャブを身にまとうことの暑さと煩わしさ、
それでもこの国で生きていかねばならない女性達への同情、
あと・・・でも、でも、
このままの感情で帰るのは嫌だという気持ち。
なんとかしてこのヘジャブのいい所も見つけたくて、
少しでもいいから自分の中で認めたいという気持ち。
(この時点で1つ。「太っててもばれない。」しか思いつかなかった)
なんとも日本人的発想かもしれないが、
自分の中で「オトシドコロ」がほしかったのだ。
道を歩きながら、
バスの中で、地下鉄の中で、バザールの喧騒で、
続く。
(MIWA)