もう1つのプロジェクト、
それはアフリカの風景で
恐らくもっとも僕らの心をざわつかせた、
「奴ら」への挑戦だった。
昼間から飲んだくれる、働かない男たち。
小学校の支援とはまったく別なんだけど、
とにかくあいつらに何かもの申したい、
たかられっぱなしで終わりたくない、
そんな思いから行きついた案だ。
*
カタベイの多くの若者たちは、
ツーリストに木彫りの名前入りキーホルダーや
紐で作ったアクセサリーを売って小銭を稼いでいる。
(仕事してるとも言えるが売上は飲み代に消え、
結局日中はほとんど飲み屋でたむろをしている)
しかし、どれも大してイケてないし、
如何せんみんな同じモノを売ろうとしてくるので
買う気にならない。
そこで考えた。
彼らの飲んだくれている酒のパッケージを使って
新たな、売れる、商品を、つくることができたら、
「飲んでるばっかじゃなくて、飲んだら働こうぜ!」
「頭を使おう!工夫しようぜ!」
という僕らのメッセージを
少しでも伝えられるのではないか、と。
SHAKE SHAKE CHIBUKU なかなかポップなパッケージ
*
□□ 出発6日前 □□
アイディアを思いついたその夜、
ちょうどブーブスがマヨカに来ていたのでつかまえて話をする。
最近は僕らがお金を出さないと気づいてあまり近づいて来なかったが
金の臭いを感じたのか興味を示した。
OK 明日、15時。例のシブークバーで。
□□ 出発5日前 □□
ブーブスはいつもの仲間、レモンスクウィーズと
ウィリアムを連れて時間通りバーに現れた。
キックオフ・ミーティング。
「このパッケージを使って何か新しい商品を作れないか?」
自信を持って伝えた僕の期待とは裏腹に
彼らのリアクションは正直イマイチだった。
口では「うんうんいいね」と言うのだが
商品のアイディアは出てこない。
目の前の金のためだけに動いてほしくない僕は
試作品製作への報酬については敢えて曖昧にしていたが
「金にならないなら面倒はご免だぜ」
と言う事だろうか、どうも100%乗り気に見えない。
あまり盛り上がらないまま時間が過ぎ
沈黙が場を支配しだした。
見渡すと回りは全てローカルで
ムズング – 外国人は僕1人(美和はこの時いなかった)。
退廃したムードの中、ひとり息をまくアジア人。
次第にこの場にいる事が途中から辛くなっていた。
耐え切れなくなった僕は元々考えていた
「メモ帳」のアイディアとデザインイメージを伝え
逃げるように宿に帰った。
アイディアを思いついた時はサイコーだと盛り上がったが
結局僕らの独りよがりだったのだろうか。
明後日までに5つ作ってみる、と言わせたものの
あの様子だと何かと言い訳をされて
何もあがってこないのではないか。
なんだか不安だ。。。
□□ 出発4日前 □□
夕方、お師さんのところで話をしているとブーブス達がやってきた。
予想外に彼らは試作品を完成させてきたと言う。
なんと!
「昨日の夜、紙を切ったり準備をして
今日朝から夕方まで1日中つくってたよ。」
約束は明日までに5個、だったが、10個もうできた、と。
電気ガスは通っていないしキッチンは無い。これが彼らの住む環境、うん。
ディテールに問題はありながらも
伝えたアイディアを元に色々工夫した後も見える。
紙パック表面の防水素材をはがして
手帳の中の紙を作っているのは秀逸だ。
(元々はカバーをCHIBUKUで作って中の紙は買わなきゃと思っていた)
シンプルでちょっと遊びが欲しいと思ったので、
追加でKUCHE KUCHE(ローカルビール)の瓶の蓋と
ワイヤーでカバーの留め具を作ってほしいとお願いする。
作ってきただけでも興奮する僕に対し
「お金がもらえると思ってるだけでしょ」と冷静な美和。
どうも信用ならないらしく今回はちょっと一歩引いて見ている。
□□ 出発3日前 □□
約束の時間に3人はちゃんと仕事をして現れた。
ここはこうした、そこはこうだった、
と工夫したことを伝える様子は好感を持てたし、
何より3日連続で約束通りに仕事をしてくれた。
キックオフの時にはかなり不安にさせられたが、
とにかく素直に嬉しかった。
とりあえずサンプル10個を1000クワチャ(600円)で買取り
目に付いた改善点を指摘する。
今後については「引き続き改善に努めよう」と。
ところが。
よし試作品ができた、となってふと気づいた。
「で?これで終わり?」
モノを作る事ばかり考えていたが
それが本当に彼らの商売につながり
彼らがより働くようにならなければ
本当の意味の成功とは言えない。
なかなかカワイイが果たしていくらで買ってもらえるのだろう?
品質は相変わらず粗いし(線が曲がっていたり上下が逆だったり)
お金を取る商品として考えると更に改善が必要だ。
宿に戻り、2人で話をする。
商品の改善もそうだが、
モノをつくって満足しててもしょうがなくて、
今回何がしたくてやり始めたのか、本質を確認しなきゃだめだ。
うん、そうだ、
飲んでばかりいないで働け、これだ。
これをやつらに伝えたかったんだ。
だから酒パックから商品を作ろうと思ったんだった。
ロゴを作ろう、そう思った。
「just drink → drink and make- ただ飲むだけ から 飲んで作る へ」
「we`re not just drinking- 僕らはただ飲むだけじゃない」
こんなコピーでロゴにできたら、
メッセージ性が出るし売るときのフックにもなる。
その夜は宿で何人かに見せてなかなか好感触だったので
ゴキゲンで寝る
とりあえずロゴについても明日彼らと話をしてみよう。
□□ 出発2日前 □□
町に出て彼らの溜まり場へ行くと案の定彼らはいた。
さっそくロゴの話をすると「いいねいいね!」と
いつもの通り調子がいい。
いやお前らを皮肉ってんだけど。。。
まあ、いいか。
ロゴもウィリアムから良いアイディアが出てきた。
「drink and sweat」
スウェット、汗、汗をかく=働く。
いいじゃんいいじゃん!
それで決まり!とハイタッチし、
そういえば得意技だったよね、と
木彫りのスタンプをつくるように依頼する。
明らかに雰囲気がの違う奴ら。
既に何人かに話をしたらすごく反響が良かったらしい。
そして、KUCHEKUCHEの蓋はバーに頼んでもらってあるから
大量生産準備オッケーだぜと胸を張る。
よし、いいぞ。
何か将来につながる兆しのようなものを感じることができた。
*
こうして出発直前になんとかカタチにすることができた
飲んだくれへの挑戦プロジェクト。
新商品というカタチはできた。
メッセージを体現するロゴもつくった。
彼らも徐々に前向きに変わっていった、気がする。
ので、よしとしたいところではあるが、
同時に何かもやもやとしたものを感じていた。
今回の一連の経験が、
彼らが自分で新商品開発や改善努力を続けるように
変わるきっかけになるのであれば完璧だが、
正直そこまでのインパクトがあったかは疑問の残るところだ。
かと言ってあと1年、彼らと一緒に過ごして
彼らを本気で変えるための努力をし続ける覚悟も無い。
結局ちょっとしかいない「よそもん」のジコマンでしかなかったのかも・・・
とまあ考えればきりがないのだが、
楽しかったし、やってみたことは意義はあるはず。
このプロジェクト、65点ってことで!(強引ですが・・・)