□□ 出発当日 □□

2週間となったカタベイ滞在も今日で終わりだ。
今夜出発する船で2日かけてマラウィ湖南端の町を目指す。

レッスンと悶々で過ごした最初の1週間と、
大急ぎで動いた後半5日間。
振り返ってみるとなんだかあっという間だが
今日で終わりと思うと急に寂しくなった。

長く過ごした町では毎回感じる寂しさなのだが
こういうときはアブダビのデイルの言葉を思い出す。
「move on! moving on!」
立ち止まらず、前へ、前へ。

 

15時。
ずっと宿を離れていたキャサリンに時間をもらう。
作った資料 on iPadでプレゼン。

じっと画面と僕を見つめながら、
しっかり話を聞いてくれたキャサリン。
何度もwow!、good!、と頷いてくれた。
(彼女の、人を大切にするコミュニケーションにはいつも感心させられる)

「是非やってみたいと思う。」

懸念していたオペレーションコストについても
伝票の集計時に1つ帳票を増やすだけですむとの事で、
快く実施を合意してくれた。
ちょうどメニュー全体の改訂を予定しているとのことで
さして時間もかからないだろうとも。

さらに、バタフライや他のロッジにも話をしたいので
データを欲しいとのコメントも。
まさにお願いするつもりでした、と
用意していたデータのCDとプリントアウトを渡す。

よし、なんだか上手く行き過ぎ?だがやってくれそうだ。
こちらからの勝手な提案なので具体的な日程は聞けなかったが
その際には必ずメールをくれると言うので
楽しみに待ちたいと思う(ブログでも別途ご報告できることを願って)。

 

16時。
固く握手をして2週間過ごしたマヨカビレッジを後にする。

何度もサンキューを連発して見送りをしてくれたキャサリン。
彼女との距離が近づいたような感覚と、
ひとつプロジェクトを終えたという安堵で、
何とも言えない幸せな気持ちに包まれる。

宿の車で送ってもらいながら町を目指す。

道すがらこの2週間で顔見知りになった何人もの人に
「YUKI!MIWA!」と呼びかけられ、グッバイをする。
なんだこれ、ドラマの最終回じゃね?と話しかけても
感動でいっぱいの美和はろくに話を聞いてくれない。

そして、本当に世話になった2人、
お師さんアユーブとティーチャーマシンにも挨拶。
素敵な時間を心からありがとうございました。

なんだろう、とにかく感動していた。

 

17時。
船着き場で確認すると船の到着は夜中の12時以降になるとのこと。
それまで町の中心にあるゲストハウスのバーで時間を潰すことに。
あと7時間、ずいぶん長いがまあしょうがない。
ビールでも飲みながらだらだらしよう。

 

21時。
気づいたら寝てしまっていたようだ。
目を覚ますとバーは賑わいを見せており、
美和はブーブスやレモンスクウィーズ達とテーブルを囲んでいた。
あいつら、来てたのか。

合流し、会話に参加する。
すると1人の女性を紹介される。
ニコルfromイングランド。

なんとCHIBUKU手帳の初のお客様とのこと。
しかも500クワチャ(300円)で買ってくれたと!
(もとの酒が85クワチャだし僕らの感覚としては
売れても100クワチャかなあと話していた)

おおやったな!おめでとう!!と言うと
もう既に何個も作っているし間違いなく売れる、
3週間後に南部である「LAKE OF STARS」http://lakeofstars.org
という音楽フェスまでに百個は作って売りに行くのだ、と胸を張る。
オイオイなんだよいいじゃん!!
超、いやまじで、超、嬉しかった。

 

酒の力は偉大なり。

その後は何故?というくらいに大盛り上がり。
まさに時が経つのを忘れてしこたま飲んだ。

どうしてだか覚えてないがブーブスのドレッドを1本切ることに

お約束の記念撮影。忘れないでと記念にもらった。

そして、酔っ払いの会話。


レモンスクウィーズ(以下LS)「ジャパニーズは全て機械にやらせて汗をかいてねえからダメだ!」


僕「バカ野郎、お前らはもっと俺ら日本人を見習って脳みそに汗をかかなきゃダメだ」


LS「確かに今回お前らの脳みそのおかげでいいものができたからな。
でも表面をはがして紙を作るのは俺のアイディアだ!」


僕「てことは今回のはジャパニーズとマラウィアンの共同作品だな。
それに俺らももっと体に汗をかかなきゃだめなのも事実だと思う。」
LS「そうだそうだ!お互いに歩み寄っていこう!」
と意味不明の握手。の図。 
(一連の写真のポイントは酩酊気味のブーブスです。)

バカ話の裏では美和が結構いい話をしていた。

美和「将来の夢は何なの?」
ブーブス(以下B)「俺はインターナショナル料理を勉強したんだ。
ここを出て首都に行って修行を積んで、パスポートを作って海外で働くんだ!」
※実際以前はマヨカのコックとして働いていた経験もある。
美和「いいじゃない!いつ首都には行くの?」
B「いや、首都に行くためのバス代が無いんだよ」
美和「そんなの働いて貯めるだけじゃない!何で貯められないの!?」

21歳の若いブーブス。
を心配する美和は完全に母の目線だ。

B「分かってる、分かってるよ。でも毎朝先輩が来て
オゴるから飲み行くぞと言われてしまうんだよ。。。」
美和「でも少しずつでも変わらなきゃ!
あんたが変わったら周りの人も変わるんだよ。
あんたならできる!若いんだから!!」
B「うん、そうだ。俺は変われる。変われるんだ!」

典型的な酔っ払いの、でもなんだか幸せな会話。

 

深夜1時。
ついに、湖の向こうに船の光が。

 

到着を知らせる汽笛が鳴り、バー内に歓声が上がる。
UNDERWORLDのBorn Slippyが流れ出し
ブーブスとレモンスクウィーズが踊りだすが全然カッコよくない。

 

荷物をまとめて出発する。
すると彼らは「エスコートする」と
僕たちの荷物を持って一緒に来てくれた。

 

 

 

 

途中、荷物重いでしょと軽く声をかけると
急にレモンスクウィーズが語りだした。

昔軍に在籍して戦争に行ったことがある、
その時はジャングルをこの数倍重い荷物を背負って何日も歩き続けたと。
あの頃俺はドラッグ漬けのクレイジーなジャンキーだった、
でも今まともな生活に戻って本当によかった、
人を殺すなんて最悪な仕事だ、絶対に二度と戻りたくない、と。

ふと見た彼の目には涙が浮かんでいた気がする。

 

数分で船着場に到着した。
固く握手をして、ハグをする。

お前らに会えて本当に良かった、別れなきゃならないのは悲しいが、
次来る時は俺の家に泊まれよ、小さくて汚いところだが無料だぜ、
とレモンスクウィーズ。

ありがとう。絶対また来るぜ。
それまでにメモ帳売りまくって金稼いで
キレイな家に引っ越しておいてくれよと言って笑った。

ブーブスにwe can changeを念押しする美和。
すっかり息子キャラで素直に頷くブーブス。

あぁ、この風景は一生忘れないんだろうな、
そう思える、素敵な別れだった。

*

その日、少なくとも僕らの目にうつった彼らは、
ガービッジなんかじゃ、なかった。
僕らと同じように、悩み、考えながら、
毎日を必死に生きている若者たちだった。

そう発見できた事が、間違いなく、
今回のプロジェクトの一番の成果だ。
一緒に頑張っていこうぜ。応援してる、心から。

 

さあ次へ行こう。
僕らは押し合いへし合いを乗り越え船に乗り込んだ。