木曜日
14時。3日間サーフィン三昧の島生活を終え、
再びディエゴ&エリーザの待つパリョーサへ向かう。
3日間はやはり短いが、後ろ髪ひかれるくらいがちょうど良いと最近思う。
今晩は居候のお礼に日本食をふるまう提案していた。
聞くとやはり寿司が人気だったのでメインは巻き寿司。
あとはベジタリアンでも楽しめる日本食を、、、とバスの中で作戦を練った。
島の中心にあった市場にて野菜を調達。
粘度が足りず何度も崩壊の屈辱を味わった米は、期待の持てそうなパッケージに出会えた。
パリョーサに着いた時はすっかり日が暮れていた。
既にみんなは集まっていた。何時に来るとか何人来るとか事前に会話ナシ。
足りなくても遅くなってもなんでもOKな感じ。
お待たせしたのでさっそく調理開始。
切り方も知らないのになんとサーモンを買ってくれていた。
準備が整い「巻き」に入るとみんな真剣に聞きだした。
頭巾かぶって大学生を褒めて教える美和。この感じはどう見てもお母さん。。。
巻きingエリーザ。超シュール。具材はサーモン、アボガド、卵焼き、しいたけ煮つけ、きゅうり。
それに「これは絶対に必要」と彼らが主張して買ってきたクリームチーズ。
寿司のほかに大根とかぼちゃの煮物、茄子のしょうが焼き、トマト卵炒め、
写真には無いけど後で焼いたねぎ焼き(これが恐らく1番人気だが味付けはマギー・・・)。
どれもレシピを聞かれ大好評でひと安心。
ひとしきり食べた後、突然みんながだまりこんだ。
すると一拍置いてエリーザが代表通訳として話し出した。
「今日は日本食をありがとう。 お返しにプレゼントをしたいから目をつぶってくれ。」
みんなはニヤニヤ笑ってる。
よく分からないまま言われた場所に座り目をつぶる。
誰かが電気を消した。
完全な静寂。
なんだなんだ?
数秒後、 パチ、パチ、と心地よい音が聞こえてきた。
手を叩いているのか、指をならしているのか。
目を閉じて音に集中する。
雨の音だ。
ジャングルの木々から雨がしたたり池にしずくが落ちている。
しばらくすると徐々に雨がやむと、別の音が聞こえてきた。
フィーフィー、サササ、ホウホウ。
虫が泣く音、木々をつたって飛び回る音、小さな泣き声も聞こえる。
さらに魚が川から跳ねる音、ゾウが木々を倒しながら進む音、
2重にも3重にも重なりながら、
徐々にそのトーンや音色を変えつつ続いた。
数分後なのか数十分後に音はフェードアウトし
再び静寂がおとずれる。
電気がついた。
目を開ける。
みんなが僕らを見ている。
僕らはジャングルの演奏会に、心からの拍手を 贈った。
自身の手、喉、身体、机、椅子や皿やスプーンを楽器とした
ナチュラル系ノイズセッション。
いかにも彼ららしいプレゼントだった。
その後僕らはバックパックに眠っていた
若者向けの必殺のお土産を彼らにプレゼントした。
昔インドでラジェッシュの誕生パーティで見せたら
場を凍りつかせ「年長の家族の前ではタブー!」と拒否された秘密兵器、
四十八手の春画カード。
期待通りのリアクションに大満足しながら、宴はおひらきとなった。
金曜日
8時起床。
バルコニーで昨日の残りを中心とした朝食をとり、
学校へ向かう2人を見送る。
リオデジャネイロ行きのバスは昼過ぎなのでゆっくり朝を過ごした。
残っていた野菜で昼食用におにぎりをつくり、
エリーザが気に入った煮物を再度つくった。
ゆっくり荷造りをし、掃除をした。
ありがとうの手紙を書いて、バス停に向かった。
*
ヒッピーという人たちがいる。
ボロボロで独特のファッション、ピアス、タトゥーにドレッドが彼らのトレードマーク。
そして彼らの信条はLOVE&PEACE、ART、MUSIC、FREEDOM、
そしてBACK TO NATURE、だろうか。
旅をしていると路上でアクセサリーを売っている彼らに頻繁に出会う。
気合の入ったリアルヒッピーからヒッピーテイストな人まで濃淡はあるが、
それはもう頻繁に。
アルゼンチンやブラジルでは「ヒッピーマーケット」が毎週開催されていた。
(アルゼンチン>コルドバでのマーケットは出展者の大半がヒッピーテイストだった)
(リオデジャネイロの一番のエリアIpanema、その名も「Feira Hippie」(ヒッピーフェア))
日本では「一部の過激な人たち」というイメージだったが、
少なくとも彼らの信条(得てして行き過ぎた資本主義思想への批判とともに)は、
世界では大きな流れとして強く存在すると感じてきた。
僕らも、彼らの信条やスタイルは嫌いじゃない。
会社を辞めて旅を始めたのも僕らが「そっち寄り 」だからかもしれない。
ただ同時に、その「世捨て人感」には抵抗があった。
LOVE&PEACEもFREEDOMもNATUREも賛成だけど、
社会の構成員として現実を見つめた責任ある行動が必要と思っていた。
(インド>ゴアのニューイヤーパーティはヒッピーでいっぱいだった)
(ついこないだブラジル北東部の山の村で会った彼女は子連れだった)
そんな中、今回の「ナチュラル系な若者達」との出会いは、
とても新鮮だった。
自然や音楽を愛し、
今までに無かったナチュロロジーという新たな学問を、
ピカピカのキャンパスで学ぶTOP10%エリートの彼ら。
「自然の力で人はもっと心身ともに健康になれる」、
とナチュロロジストという新たな職業を目指す彼ら。
彼らは、世捨て人感たっぷりのリアルヒッピーでもなく、
ヒッピー志向だけど普通の人でもなく、
その中間を行こうとしている新たなネオ・ヒッピーと言えるかもしれない。
(キャンパスにて)
素敵なもてなしと新鮮な刺激をありがとう。
数年後、10年後、君たちはどんな人生を歩んでいるんだろう。
再会を心から楽しみにしています。