5日目。

今日は1日すべてを休んで、初日にカレーをご馳走になった
地元のソーシャルワーカーの雄・シッダールタに
彼のプロジェクトを見学させてもらう日にしていた。

学校に行く前に朝のmtgをし、各チームの状況を確認する。

Aチームは昨日の現場確認を経て諸々がタスクに落ちて来ているよう。
寄付箱や飾り付け、ショップの子ども達に支払う疑似マネー、
案内板、子ども達の名札、チラシなど、制作物の一覧が報告される。

僕が一番気になっていた集客についてはとにかく今日中にチラシを仕上げ、
明日明後日で7人全員で町中に配る&貼り紙させてもらう段取りを確認した。

 

美和は昨日ウメスミの主体性を心配していたが、

「参加してよかったと日に日に思ってる。
毎日やることだらけで大変だが絶対成功させたい」(ウメ)
「自分で調べて、自分で進めている手応えを感じる」(スミ)

と前向きなコメントもあり、ひとまず胸を撫で下ろす。
大丈夫、彼女達ならきっとできる。

 

Bチームは粛々と作業を進めていた。
井戸は今日支払いができ次第工事を開始し、
僕らの滞在最終日には完成が見れるとの嬉しい報告。
支払いも全額最初に払わず、進み具合に応じて払うとの気のきかせようだった。

青空教室は、先生探しと面接が必要で、開校までに1週間はかかるとのことだが、
開校のターゲット日を設定し順調に動き出せるとのこと。
気になっていた「僕らがインドを去った後」のコミュニケーションについても
月2回のレポーティングの段取りで進めるとのことで、ほぼ完璧な進捗報告だった。

 

9時。
シッダールタの元へ行き、彼の進めるソーイングセンター、
孤児院、病院事業の現場を案内してもらう。
1つ1つが現場感を持ちつつも、長期的視点で検討されており、非常に勉強になる。

 

続いて、シッダールタの右腕のディベンドラの案内のもと、
「ニランジャナスクール」を訪れる。

冒頭から圧巻だったのは全生徒による始業のお祈り。
手を前であわせて目をつむった数百の子ども達が一斉に祈りささげると、
透き通った声があたりに響き渡った。
それは美しいとしか表現できない、崇高で特別な時間だった。

 

校内に入ると壁にはアーティストによるペイントがあらゆるところで施されていた。
子ども達の感性を刺激する空間に、特に美大生のウメは感動を隠せない様子だった。
ある教室は壁から床から全教室を使った1つの作品となっており、
子ども達が勇気と夢を持って進んだ先に将来が開けるという
思いを表現したものだと言う。そのパワーにみなで興奮し記念撮影をした。

 

続いて、別の村につくったばかりだと言う学校も見せてもらう。

ここはなんと日本の関西の学生達が街頭募金やチャリティイベントにより
集めた寄付金によりつくられたものとのことで、
その団体名をとって「BEAMスクール」と名付けられていた。

ディベンドラが説明を始める。

「ここはハリジャンの村で、ずっと学校がありませんでした。
村人達に教育の大切さを説きながら、青空学校をやってきたんですが、
今年からBEAMからの資金提供があり正式に学校として運営を開始できました」。

開校日に制服を子ども達に配ると、それを見に集まっていた村人達が
涙を流して喜んだ、という話にみなで唸る。
モノやカタチの持つ意味。
物にあふれた社会に生きている中で忘れていた
何か大切な事を思い知らされたような気がしていた。

ふと横を見ると、ウメの様子がおかしい。

声をかけるとせきを切ったように涙を流し始めた。

「さっきの学校の壁を見てからなんかうわーっとなっちゃってて、
少しおかしいんです、大丈夫です、すみません」。

初海外で、しかも恐らく世界最強最狂の国インドで、
過密スケジュールの中プロジェクトやれだ先生になれだ言われ、
とにかく突っ走ってきたが、吸収し続けて来た刺激がキャパを超えたんだろう。

そういえば僕も去年ブッダガヤに来た際、
数日たった後に何かのタイミングで
いきなり涙が止まらなくなったのを思い出した。

 

それから皆で村の中を通り、町を抜け、宿に戻った。

盛りだくさんの一日だった。

 

夜は、一足先に帰らなければならないケンゴの最後の夜ということで、
しなびた高級ホテルのレストランでディナー。

皆は特に今日のBEAMスクールが印象に残っていたようで、
タクは「校舎の壁に『NAME OF DONORS(寄付者)』として
日本人の名前がならんでいて、なんだか誇らしかった」と
今日のTHE MOMENTを発表した。

昼間涙を見せていたウメは、
「今まで寄付とかボランティアとか、どこか苦手というか抵抗があったんですが、
ニランジャナスクールの壁画を見て、こんな形の貢献って素晴らしい!
って心底感動したんです。芸術の持つ力を再確認しました。」
と思いを語った。

最後に、ケンゴにひとこと!

なんて話していると、スミが急に泣き出した。
「私は何もできてないのに、優しくフォローしてもらって、うっうっ……」
ってお前らどんだけ青春だよな展開に、ケンゴは苦笑しつつ幸せそうだった。

 

 

食後は宿に戻りmtg。
チラシを今晩中に完成させなければならないが、まだ全然終わっていなかったのだ。

 

心やさしきBチームの2人も加わり、
男性陣でコンセプトや案内文、タイムスケジュールの翻訳を、
女性陣がイラストやデザインを担当する形で3時間みっちり作業をし、
なんとか翌日からの告知開始へ間に合わせる事ができた。

決戦まで、あと3日。

(続く)