スペインでは年越しに12粒のブドウを食べる。みんなでTVの前に集まり、マドリードの広場の中継を映し出す。除夜の鐘を思わせるゴーン、ゴーンというカウントダウンがはじまり、鐘の音にあわせ葡萄をそれぞれ口に放り込んでいく。12回鐘が鳴り、口いっぱいにブドウを含んでFelize año nuevo! と叫ぶ。

子供たちは笛を吹き、親たちはキスをする。外にでると花火があちこちで打ち上げられている。TVからは蛍の光が流れ出す。そうだ、日本の年越し/閉店ソングは海外では新年ソングだったのだ。

2020年。本間家の新年はバスクで明けた。

若い頃から旅が好きで、この「違い」を各地で楽しんできた。何十カ国も旅したけれど、違いハンティングは飽きることがない最高のエンターテインメントだ。年越し習慣に限らず、中に席があってもわざわざ寒い外で飲むこととか、1日5回食事の時間があることとか、子どもにインスタ用の写真を撮らせること(しかもこの店はカッコいいからってトイレで!)とか、旅先には愉快な違いがあふれている。

僕らは違いを通じて自分を知る。謹賀新年のたった4文字に込められた日本人らしさを噛みしめ、帰ったらオンデマンドで紅白歌合戦を見ながら持ってきた日本酒をあけようと誓う。

違いは、「同じ」を引き立たせる。違う顔、肌の色、言葉、文化、習慣、こんなにも違うのに僕らはたくさんのものを共有している。大切な日に大切な人たちで集まること、美味しい食べものが中心にあること、子どもたちを愛して愛して愛してやまないこと。

(子どもたちは大人たちの前に子どもだけで食事を食べる。しかも21時ごろ・・)

そして、違いが世界を創る。違いから学び、違いを混ぜ合わせて新しいものが生まれる。バスクの美食の文化を築いたヌエバコシーナのシェフたちは、世界を旅して得た知見をフュージョンして新たなバスクキュイジーンをつくったと言われている。クリエイティビティは体験した違いの量に比例する。

ダイバーシティの概念は日本でもかなり市民権を得てきて(紅白でも表現されるほどに!MISIA!)、これから更に当たり前になっていく。ダイバーストな環境に自らを、そして子どもたちを置き続けることは、僕らの生存戦略だ。

でも、こうも思う。
Diversity starts from you and I.

妻のポエムにも綴られているが、夫婦として「違い」にどう向き合うかはここ数年の一番のテーマだった。国籍やジェンダーという「分かりやすい」ダイバーシティもそうだが、より大切なのは「すぐそこにある違い」に対する姿勢だと思う。評価する前に耳を傾け、優しい気持ちで向き合う。

2020年。未来の代名詞だった年が明け、未来が今になった。きっと2030年も2050年も2100年も、そうやって今になっていくのだと思う。僕らの今、子供たちの今、誰かの今として。

あけましておめでとうございます。違いをたっぷり吸って日本に帰って僕らなりのフュージョンを創りたい。今年もひげとボインとアオとアサをどうぞ宜しくお願いいたします。