先週末、地元藤沢のショッピングセンターで無印良品の長蛇の列に絶句した。レジ担当だけで10人、その裏に更に4-5人のスタッフが会計関連の仕事を懸命にこなしていた。効率は悪くない、というかむしろ手際の良さ(それと感じのよさ)に感心して見ていたのだけど、現実としてレジ待ち行列はゆうに30メートル越え。どうしてもシンガポールのあの店を思い出さずにはいられなかった。
5年前にシンガポールで創業したオンライン買い物代行サービスのHonest Bee。UBER EATSの生鮮買物版というと分かりやすいかな、数年前からは日本でもサービスを展開してるので知っている人も多いと思う。(と思ったらいま2019/6現在サービス停止中で大変なことになっている模様・・・)
さてそのHonest Beeが昨年シンガポールで初のリアル店舗「Habitat」をオープンした。すべてスマホベースのキャッシュレス対応。現地駐在のマイメンけんごが「ここは当然押さえておけよ」と連れてってくれた。
子供たちが生きる未来
Habitatは、いまアメリカ中心に急激に増えているキャッシュレス店舗。スマホアプリでバーコードを読み込んで、レジ不要でそのまま家に帰れる(”Just Walk Out”というらしい)。5年前?に想像していた未来は、この店に限らず確実な現実として世界各国にもう出現している。僕らの子供たちが生きる未来はここにあり、さらにここから今は想像もつかないところへ進化していく。それだけは間違いない。
正直、もうキャッシュレスだけでは全く新しさも未来感もない。Habitatでも機能的にはAmazon Goよりもシンプルなものだったけど、体験全体としてのスムーズさ快適さは素晴らしいと思ったし、きっと未来もUX(ユーザー体験)がポイントになることは変わらないだろう。
UXという意味では、エンターテイメント感へのこだわりやセンスを感じた。売り場だけでなくイートインできる店舗が併設、カフェスペースもある。と書くとすんごく普通なんだけど、そのデザインやディスプレイなどがいい感じで、トータルに楽しいんだよなあ。すごく賑わってたけど、オープン直後の真新しさだけでなく、気に入って普段使いしてる感の客が多かったような気がする。
実店舗のキャッシュレス化の流れは間違いない。便利さを追求し無駄や非効率を排除するように物事が変わっていくのは、歴史が証明した人間の性であり法則だから。
実際、AmazonのAmazon Goはすでに10店舗以上に増え、2021年に3000店なんて記事も出ていた。その他、アメリカ西海岸では無人店舗システムを提供するスタートアップもあるし、アリババも「フーマー」というかなりイカした店を出した。いずれもキャッシュレスだけでなくAIによる自動化・最適化やECとの融合などの展開が明確。二極化なのか多様化なのかで当然それ以外も残るけど、ツルツルしたストレスフリーな世界が実店舗でもガンガン広がっていく。これが、僕らの子供たちが生きる未来。
その中で、僕は「意味」を問いたい。世の中に、子供たちに。ツルツル世界、上等。ユーザー体験向上、最高。でもそれだけじゃ足りない。便利さで暇になった時間で何をするのかが問われる時代、もっといっぱい消費するの?そうじゃなくて、意味あることをしたいよね。それを問う姿勢や場の提供こそ、子供たちと彼らの未来に僕らが負っている義務だと思う。
イタリアには、その名も「未来のスーパーマーケット」という「Supermercato del Furturo」という店がある。ここでは各商品のバーコードをスキャンすると生産過程や生産者の情報を見ることができる。トレーサビリティ、さらにはストーリーという「付加価値」と言うこともできるけど、「背景を知って消費する」もっと言うと「消費するものについて知る」という常識をつくろうとしているとも言えるのではないか。そこに僕は「意味」があると思う。「意味あること」にテクノロジーの力が活用される未来の方がいい。そんな未来をつくる側にいてほしいから、僕らはこれからも世界中に子供たちを引き回していく。