オジワロンゴに到着しカフェで地図を広げ
旅情に浸っていると
あるフランス人貴婦人が僕らを迎えに来てくれた。


モニク エスキュラット61歳。
会計士としてナミビアに長く住んで来たが、
1年前からフランス大使館が建てた
ある幼稚園のマネジメントを任されている。

アフリカにおいてもソーシャルワークの現場を
見てみたいとかねてから思っていたところ、
スワコップムントで出会ったフランス人ジャーナリスト、
アネリーナからモニクの話を聞きとにかくこの町に来て見た。

到着後とりあえず電話してみたところ
昼食を食べていたカフェまで迎えに来てくれたのだ。
簡単な自己紹介をしたところ家に泊まって良いと言ってくれたモニク、
の家はそれはそれは素敵なところだった。


(平屋の一軒家+いくつもの庭もちろんプールつき、庭の草木はガーデナーが整備)

家にはフランスから1人ボランティア、マシューが滞在しており、
フランス&日本の異文化交流共同生活が始まることとなった。

そしてそれは僕らが家について
荷物を下ろしたちょうど直後の事だった。

お手伝いのオレリアが
「庭にクードゥーがいる」と騒ぎだした。

クーズー【kudu】
ウシ科の哺乳類で、レイヨウの一種。アフリカに分布。頭胴長1.9~2.5メートル。
やや小形のものにレッサークーズーがある。(goo辞書より)

カートラブルで足止めをくらったアウスで
「夜は絶対運転するな、クードゥーが光に向けてアタックしてくるぞ」
と注意されていた、危険な動物。

庭に出ると奴は確かにいた。
クードゥーにしては小さいらしいが十分でかい。

マシューと共に庭の外に追いやろうとするが
茂みにかくれた彼女(メスだった)は
なかなか動こうとしない。


(棒で音を立て威嚇しながらおいやろうとするマシュー。)


(告白します。美和がホースを取り出した時、僕はビビって2m後ろで傍観していました。)


(ブーゲンビリアの茂みに隠れたクードゥちゃん、可愛げだけどデカい。)

30分ほどたってもまだ動かないクードゥ。
報をうけ仕事先から戻ってきたモニクは
自治体へ電話をして専門家に相談していた。

しばらくして「Ministry of  Environment」
と書かれたシャツ を来た人がやってきた。

ところが専門家と期待した彼も恐る恐る様子をうかがうだけ。
現地語で同僚と話をしているがこちらには何も言わない。
しびれを切らしたモニクが状況を聞く。

「どうするの?」
「よだれをたらしています。狂犬病にかかっている恐れがあります。」
「で、どうしてくれるの?」
「その場合、残念ですが銃で射殺する必要があります。」
「で?」
「でも私は銃を打つことができません。」

お前は何のために来たんだ?
という場の空気に気付く様子もない
アフリカっぽいやりとり。

そして更に待つこと数十分、
ついにガンマンが登場した。
我々と会話をすることなく数秒で現場へ直行 した。

パァーン!と響き渡る乾いた銃声。
ドサっと何かが倒れる音。
そして「残念ですがこうするしかないのです。」
と一言残してガンマンはその場を去っていった。

到着からその間わずか1分程度。
目の前で大きな身体の動物が倒れている。
一瞬だったがショックで心臓がバクバク言っている。

 

不謹慎かもしれませんが、リアリティということで。
下記、見事に脳天を打ち抜かれたクードゥーの
断末魔から車へ乗せられる映像です。 

クードゥの狂犬病ウィルスは基本的には
人間には大丈夫だと言っていたけど
これは日本で大騒ぎのBSEとか口蹄疫とかそういう類じゃないのか?
ホントに大丈夫なのだろうか?
などと焦ること自体がなんか場違いで空しい。

そしてクードゥの息は間もなくとして途絶えていった。
頭以外は問題ないらしく食肉として処理されると言っていた。
クードゥを含む鹿系の肉はスーパーでも「game」
として干し肉(ビルトンという定番)として売っているし 
それを見て感傷的になることは無かったのだが
目の前の殺生はショックが大きい。

自然とむき出しの状況で生活するということは
こういったハプニングがいつ起きてもおかしくない
ということなのだろう。
毎日、新聞には載らないどこかで、
多くの命が失われているのだろう。
そう思うとなんだか身がひきしまる感覚になった。