やっと、やっと、ついに、この日が来た。


安宿の少しカビ臭いベッドの中で、
曲がりくねる崖を駆け抜ける長距離バスのシートで、
20キロのバックパックをよいしょと背負いながら、
何度も想い描いてきた、
「いつか来る」帰国の日。

日本の皆が夢見るような完全に自由な旅の日々の中で、
私はいつしかもといた場所、日本を夢見ていたのだがら
滑稽というか皮肉というか。
でもそれがここ半年のリアルの1つだった。


帰ってきたぞ。
私の街。東京。

そう思って勇敢に、颯爽と歩くのだけど、どうもぎこちない。
表参道で女の子とすれ違うたび、どの子もなんて可愛いんだ!とニヤニヤしてしまったり、
券売機なのに元気にオーダーしてしまったり、
列車から降りるタイミングがずれてるのか乗ってくる人の波に揉まれあぷあぷしたり、
路線図みたり道尋ねたり乗換え間違えたり、
全然スマートじゃない。
不器用丸出しなのだ。
きっと人には地方から出てきた人か、もしかしたら外国人に映っているかもしれない。
違うのよ。ここは私が10年以上住んできたエリアのどまんなかなのよ。


でも、東京に戻って数日、感じていることは、
とにかく人があったかいってこと。
あれ?東京って、こんなんだっけ?
築地の屋台で海鮮丼を食べながら
地方から来たじいさんばあさんと店員さんと大盛り上がりでおしゃべりしたり、
回転寿司屋で外国人観光客にオーダーの仕方を教えて
観光客にもお店の人にも感謝されたり、
電車の中でいた赤ちゃんを変顔で笑わせてほのぼの~って空気を醸し出したり、
高校生の集団やゴミ掃除のじいさんに話しかけて世間話したり、
ついつい我慢ができずそんなことばかりやってしまう。
変態すれすれだけど。
(え?アウト?)


そして気づく。
東京の人って、温かくて、素朴で、優しい。
自分と同じ、生身の人間なんだなーと。
あたりまえのことなのにね。

以前の私は、視界の中で、街を行く人々に血が通ってなかった気がする。
そこに確実に居るのに、居ないというか。
今は皆(勝手に)友達に思えてくる。東京にいる仲間。
色鮮やかに存在する。血が通っている。生きている。美しいな、と思う。

そんな変化もあってか、
「あれ?ここ、どこだ?」って一日に何度も思う。

これまで何度も何度も通ってきた道でさえ。
もといた街は東京で、ここはパラレルワールドで別次元のTOKYOなんじゃないかとさえ。
どうも今まで暮らした街だと思えない。
「帰ってきた」と思えないのだ。
新しい暮らしが始まろうとしているのに、

ダンボールの山をいくつも開けているのに。
ちっとも「始まる」気配も感じられないのだ。
どういうことなんだろう。


まだ日が浅く、旅行者の気持ちが抜けないのかもしれない。
いや、上記のようなちょっとした奇行にも分かるように、
長い海外暮らしで「私」がちょっと変わってしまったのかもしれない。

もしかして、完全に外国人になってしまったのかもしれない。
いやいや、それはない。
きっとそのうち奇行も収まってしまうだろう。

クールにスマートに東京を歩けるようになる。

 

いろいろ考えて、そうか、と思う。
私の中ではまだ旅が終わっていないんだ。
肉体はここにあって、気持ちも感覚もある。
でも、精神の大事な部分をごっそり、もしくは散乱させて、
どこかに置き忘れてしまっている。

それをちゃんと回収して、この肉体に収めなくちゃいけない。
パスポートには、最終地TOKYOのスタンプが押されたけど、
もうすぐ住民票を作りに行くけど、まだその回収作業が終わっていないから、
私はまだ帰ってこれない。

その作業は、きっといろんなやり方があって、
きっと放っておいても、もっと時間が経てば、私の魂たちも
諦めて海を渡って戻ってくることと思う。
でも、私は、書きたい。
書くことで魂たちを収めたい。


ブログをちゃんと終わらせよう。
まだちゃんと伝えてない。
旅で見つけた大事なこと、この旅はなんだったのか、
置いてきた魂と対話しながら、
あの時、あの瞬間の自分の感情を紐解きながら、
ゆっくり、しっかり、書いてみよう。


たかが個人ブログ、の下手な文章だけれど、
でも、ずっと見てくれてた人がいるから、応援してくれた人がいるから、
ブログを読みながら一緒に旅をしてくれた人たちがいるから、
だから私は歩けたのだと本当に思うから。
書かなくちゃ。


そんなわけです。
旅の終わり、いろんなことがあり、いろんなことを考えました。
それをこれから書いていきます。
こんなふうに自らハードルを上げてしまってなんなんだけど
真面目なのも不真面目なのも、

旅ガイド的なのも個人的なのも、
面白いのも面白くないのもあると思うけど、
どうぞ、よかったら最後まで見てやってください。


そうして私は旅を終わらせます。


だから、まだ、ありがとう、言いません。


つづく!!!

つづくよ!!!

(MIWA)