なんとか近くの町まで救出されたはいいが
車はすぐ直らないし
レンタカー屋は代車を手配できないと言う。

ここからは交渉交渉の連続。

①それは困るからどうにかして持ってこい交渉
②国境まで行くからその交通費を払え交渉

→いずれも上司巻き込んでの話にしたが
約束した翌朝、コールバックは勿論来ない。
おっかけコールも結局NG回答。

まじかよ。

③持って行った車を修理して持って来い交渉

→これはナミビア内の提携先が行うため光が見えた。
が、ちょうど週末をはさみ「土日は働かない」
「どれだけかかるか月曜まで分からない」、
提携先だけにグリップも弱く、いつになるか分からない。
何を話しても打開策が見えてこない。

「訴訟してやる!」と叫んでも意味がない、
交渉カードを持たない弱い立場を痛感。
先方もそれなりに理解を示して手をうとうとするのだが
結局「無理なものはどうしても無理です」
進展少なく時間だけが過ぎていく。


結局2泊お世話になったアウス唯一のガススタ兼ゲストハウスのナミブガラージ

 


宿は結構キレイだった 多肉植物があちらこちらに

 


町の全貌 本当に小さな小さな集落

 

交渉中はどうしても「待ち」の時間が多くなる。
うじうじしていてもしょうがないので
とりあえずこの小さな町を楽しもうと周辺を歩いてみる。

 


徒歩のスピード感と道は車から見えるのとはまた別の景色。圧倒的なサイズ感に感動した。

 


夕暮れどきに歩くとまた違う雰囲気だ。

 

小高くなっている数十メートルの小さな山に登り夕日を拝む。
素晴らしいが心のどこかで交渉の行方が気になっていた。

個人的にツボだったのがナミビアのシンボルでもあるキバーツリー(実際は木じゃなくてアロエ)

不安というかストレスで眠れない夜があった。外に出ると満点の星空。
うまくいかないだろうという悪い予感と次の妙案が思いつかないフラストレーション。 
(大金を払えば解決策はいくらでもあったのだがそれは絶対避けたかった)

3日目、あらゆる交渉が難しそうとなった時、
僕らは最後のカードを切った。
「もう契約破棄だこのヤロウ、その代わり待ってる間の宿代は払えよ」
これから先が全くの白紙にはなるが
大金を払うことやいつになるか分からない修理を待つよりも、
move on、動き出すことが大切だ、そう感じたのだ。

宿代補償も何とかとか承諾を取り付け、
晴れて自由の身に。
完全勝利からは程遠いが、
なんとも晴れ晴れしい気分になった。

とはいえ交通機関が無いので
ここからの移動はヒッチハイクとなる。


朝11時、町の入り口のハイウェイまで送ってもらい、ヒッチハイク開始。

1時間経過時点で車は10台くらい通っただろうか。
いずれも猛スピードで通り過ぎていかれたのは空しいが
様々な時間制限から離れた開放感、
何時間でつかまるか分からないけどまあいいや的な
アフリカンタイムの感覚がなんとも心地よかった。

 

ちなみにナミビアでヒッチは基本中の基本、
町の人も当たり前のようにヒッチで隣町まで行くし
他の旅行者もガンガンしている。
危険性は極めて低いのでご安心ください。

約1時間半後、ついに1台のバンが僕らの前に止まった。
見ると乗り合いバスのようでしっかりお金も取られる形だ。
バス停とスケジュールの無いこのミニバスは
いってみれば公共交通機関で、
それをヒッチでつかまえるのがナミビア流、という訳だ。

向かうは800km先、首都のウィンドフック 8時間ドライブとなる。

MJやエミネムなど往年のヒットチューンでガンガンの
車内の雰囲気はなんとなく明るく危険なにおいもしない。
ヒッチから開放された安堵もあり居心地よかった。

やがて日が暮れていった。

どこまでも続く地平線に太陽が沈んでいく。

最後の便所ストップにて。
ここから約1時間半でウィンドフックに到着、
初ヒッチで緊張の一日は無事に終わりをつげた。

と最後はちょっと気持ち良く過ごした部分はあるのだが、
とにかく今回は自身の男子力の無さを痛感し
かなり悔しい思いをした。

アフリカで長距離ドライブするにあたっての必要品、
オーバーヒート防止法(水の量を逐一ちゃんとチェックせよ、と)
そして先手先手で先を読んでの交渉。 
今回の経験からの学びは大きい。

特に交渉においてはとにかく待っていても任せていてもダメで
プッシュプッシュ&プッシュ、相手にやらせず自分でやる、
その心構えの大切さを刻み込まれた。

言い方を変えると「最悪の事態を想定する」
大切さを改めて学んだということろだろうか。
ステキな東京の常識を取り払い
何がおきてもおかしくない前提で準備をして
判断をし交渉をし、手をうつ。

特に僕はうまくいったらいいなベースで動く傾向が強いが
まさにそれが甘さだったのだと思う。
男子たるもの最悪の時も焦らず手をうてる状況にいたいもの、
意識が少し変わった気がする。

 


男子力のある男、スティーブ、ありがとう

 


ベン(中央)、みんな、本当に親切にしてくれてありがとう その様がとても自然で、カッコよかった

 

男子力・・・

言い換えるとサバイバル能力ということだろうか。

モノや道具やサービスが充分に無くても
自分で状況を切り開く力。

(美和いわく「魚をさばけること、Tシャツをちぎって止血できること、
薪を割れること、ゴキブリを素手で倒せること、etc」
などと?なものを含めて男子力の例をあげていたが・・・)

こうした力~スキルや知恵~は
生活の中で育っていくものだと思う。 
生きるため、よりよく過ごす為、の工夫から。
便利な世の中は様々な道具やサービスを提供してくれるが
便利さによりストレスが無くなった結果、
その工夫をする必要が無くなり、
僕のような男子力の弱い男が育ったのかもしれない。
個人の志向や美学により議論のあるところだが
少なくとも僕は本当に悔しかったし
もう少し男子力をつけたい、つくような生活をしていきたい、
そう強く思っている。

 


そういえばアウスで車押すの手伝ってあげた。限られたツールの中で、押したり、
角度変えたり、みんなで協力しあってなんとかして生きてるんだよなあ。